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「営業は足で稼ぐ」、と営業マンなら、誰でも一度は聞いたことがあるでしょう。そのこと自体は、間違っていないのです。
より多くの顧客を見つけるためにも、その関係を発展させるためにも、顧客との接触は必要不可欠です。接触の量は顧客の数へとつながり、売上にも反映されます。「足で稼ぐ」の本質は、接触の量を増やすべきであるということなのです。
従来の顧客との接触方法と言えば、知人、友人の紹介から始まり、とにかく人と会わないとどんな情報も集めることができませんでした。
たとえば紙の裁断機を売る営業マンはオフィス街を歩き回って煙突のある会社を探していたそうです。資料などの処分に焼却炉を使っていたところを探すためです。
また、害虫駆除の営業マンは、住宅街を歩き回って古くて湿気がありそうな木造住宅を狙ってチャイムを鳴らしました。営業マンは経験上、このような家では様々な害虫に悩まされていて、営業トークにのってくれるチャンスがあることを分かっていたのです。
ホームページも電子メールがなかった時代には、顧客は商品に関する些細な情報を集めるために営業マンを呼ぶしかありませんでした。また、それが最も手っ取り早い手法でした。
営業マンにとっても、それは効率がよかったのです。多くの未開拓の顧客が一定のエリアに存在するため、移動する時間はそれほどかかりません。好景気が続いたため、仕入れと投資も多く、足しげく通えば何かしら注文をくれました。つまり、モノが売れた時代では足で回れた件数の中から、確実に十分な注文をもらうことができました。
しかし、当時の状況とは完全に変わった現在において、足で稼ぐことを信奉している営業マンが、トップセールスを達成できるでしょうか。今は、単に訪問件数を増やすことでモノが売れる時代ではありません。
多くの法人と個人がデータベース化されている今日、いまだに足でデータを集める人はまるで原始人のようです。数百万の法人データと数千万の個人データは誰でも入手できます。特定のソフトを使って検索すれば、住所や業種をはじめ売上規模や代表者、役員の名前まですぐ分かります。自分の商品はどの地域のどの業種に適しているかを判断できれば、すぐに該当リストを作ってDMを打つことも、製品説明会に誘うこともできます。回答を寄せた顧客に電話やメールでやり取りすることで、どれほど興味を持っているのか、見込みがあるかを調べることができます。
すぐに詳細を説明してほしいという顧客もいれば、まず資料だけ欲しいという顧客もいます。早急に詳細な説明を必要としている顧客に対しては営業マンが訪問すべきですが、資料で勉強したいという程度の顧客を強引に訪問しても良い印象を得ることができません。だからといって、放ったらかしにしておいてもよいわけがありません。
メールで関連情報を送信したり、郵便で資料を送ったり、電話営業を行ったりすることで顧客の状態をチェックしておくことは大切です。少しでも顧客が前向きな反応を示せば、次のアクションを起こすべきです。訪問したほうがよいのであれば、当然訪問すべきですが、ただ会うことだけが目的になってしまうと、それは実にナンセンスです。
香港の投資家とある証券会社の営業マンと私で、都内のホテルで食事をしたときの会話を思い出しました。証券の営業マンは香港勤務中、この香港の投資家を担当していました。我々の間に以下のような面白い会話がありました。
投資家「あなたはよく私のオフィスに電話をかけてきて理由もなく会いたいと言いましたね」
営業マン 「……」(苦笑)
宋「彼はあなたに株を買ってほしいと言うために、会いたかったのですよ」
投資家「それは分かっている。
しかし、私も彼も忙しいはず。それだけの理由で会うのは時間がもったいない」
営業マンは買ってほしいから営業しています。
しかし、顧客は、営業マンの売りたい気持ちの度合いに基づいてモノを買うわけではありません。家の前で待ち伏せしてすすめるとか、わざと寒い格好して同情を誘うなどの手法を足で稼ぐと解釈するのであれば、それは邪道だと言わざるを得ません。
私は、最初に営業は足で稼ぐと言った人は、「顧客との接点を増やすべき」という意味で言ったのだと信じています。決して、無意味に歩いて行くことを強調していたわけではないと思います。
「足」で稼ぐことには限界があります。どう頑張っても件数とエリアは限られます。このモノが売れない時代において、必死に歩いたからといって十分な売り上げを確保できる保証はどこにもありません。ただ怠けているよりは、ましかもしれませんが。
データベースやインターネット技術がこれだけ発達している現在には、足でなくても顧客との接点を増やす方法はたくさんあります。IT技術を利用すれば、接触する範囲と速度に物理的な制限がなくなります。一人で広範囲の接触が可能になります。
様々なチャンネルを通じて接触している顧客の中から、自社の商品やサービスを欲しがっている顧客を見つけだして、出向きます。このようなフェース・トゥ・フェースの営業ができるのであれば、本当に足で稼ぐことになります。