Salesforce(セールスフォース)のSales Cloudの評判は?導入で成功させるには
導入することが常識になりつつあるSFA/CRMの製品の中でも、トップベンダーとの評判が高いsalesforce.com (以下Salesforce) 。
しかし、Salesforceが全ての企業のニーズに合致するのでしょうか。
SalesforceのSFAであるSales Cloudの機能を検証し、口コミも鑑みた上で、導入に成功するためのTo-Doを確認したいと思います。
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SFA業界No.1ソフトウェアベンダーSalesforce(セールスフォース)社について
Salesforceは1999年、米サンフランシスコで創業されました。
2018年にはFORTUNE100企業のうち99社がSalesforceのSFA(営業支援システム)ソフトウェアを採用し、現在の顧客数は15万社を超えています。
SFAソフトウェアで全世界市場の20%超のシェアを誇り、世界トップのSFAベンダーとして高い評価を得ています。
Salesforceが提供するSFAはクラウドサービスのため、インターネット環境とデバイスがあれば利用する場所を選びません。
つまりサーバー購入などの初期投資が不要なので、簡単に利用を始められるというメリットがあります。
Sales Cloudの製品構成と構造
現在、Salesforceは営業活動に関するさまざまな用途を想定した製品を提供しています。
ベースとなるソフトウェアがSales Cloudで、このソフトウェアで基本的な顧客管理・案件管理などを行います。
より幅広い活用をしたい時は、その他の営業活動に必要となる機能をオプションモジュールとして用意しています。
これらのオプションを追加すれば、SFA(営業支援システム)機能だけではなく、顧客に関係する用途全般を広くカバーできるようになります。
つまり、CRMソフトウェアの領域までカバーすることができる、拡張性の高い営業支援システムと言えます。
以下に、追加できる製品も含めた一覧を列挙します。
- 営業支援→基本ソフト :Sales Cloud
- 見積管理 :Salesforce CPQ
- カスタマーサービス :Service Cloud、Field Service Lightning
- マーケティング :Marketing Cloud、Salesforce DMP、Pardot
- Eコマース :Commerce Cloud、Salesforce B2C Commerce、Salesforce B2B Commerce
- エンゲージメント :Heroku
- プラットフォーム :Customer 360、Lightning, Heroku Enterprise
- インテグレーション(統合) :MuleSoft
- アナリティクス(→AI分析) :Einstein Analytics
- 業界別ソリューション :Financial Services Cloud他
- コミュニティ :Community Cloud、Community Builder
- 人材育成・学習 :myTrailhead
- プロダクティビティ :Quip
見込み客(リード)のドアノックから、マーケティング、新規顧客の獲得、さらにはカスタマーサービスまでの業務全てを支援するラインアップといえます。
SFA市場国内実績とシェア、価格について
SalesoforceのSFA製品であるSales Cloudは、日本でも業種や希望規模を問わず導入されており、内閣官房や静岡県などの行政でも利用されています。
前述の、矢野経済研究所のデータによれば、2018年の国内シェアは60%ほどあります。
Sales Cloudの特徴は多機能、Salesforce他製品とのスムーズな連携、カスタマイズが容易、サポートされている言語が多い、などが口コミからも明らかです。
価格体系は4種
Sales Cloudで提供される価格体系は、ユーザーが必要とする機能やサービスの数や質に依存するもので、年間契約が前提となります。
大きく以下の4つに分かれます。特徴を簡単に記します。
Essential
3,000円/ユーザー
10ユーザーまでの小規模パッケージで、基本機能メイン
Professional
12,000円/ユーザー
見積機能やリード(引合い情報)の登録、Outlookとの連携を開放
Enterprise
21,000円/ユーザー
ワークフローや承認システムの利用を開放、WEB API機能で任意の外部アプリと連携可能
Unlimited
39,000円/ユーザー
すべての機能を利用可能、24hフリーダイヤルサポート、カスタマイズなど最も自由度が高い
引用:SalesforceWEBサイト 料金表
https://www.salesforce.com/jp/editions-pricing/sales-and-service-cloud/
Sales Cloudの強み・導入のメリット
Sales Cloud単体の強みや導入メリットを見ていきましょう。
多機能であること
一番の強みは多機能である点です。
たとえば、SFAの肝となる顧客管理では、
- 活動履歴
- 連絡先
- 顧客とのやりとりの記録
- 関連する社内部門への簡単な情報共有
などをまとめて管理することができ、SNSでの顧客情報なども取り込めます。
これらが、顧客を迅速に理解することに繋がり、営業活動が効率的に行えるのです。
柔軟なカスタマイズが可能
システム構築に知見があれば、SIerの力を借りなくてもカスタマイズができてしまう自由度の高さも評判です。
ITに関するスキルの高さに関係なく、進捗状況や売り上げ予測などのデータをリアルタイムで把握し、その結果をITリテラシーのレベルに関係なく、誰でも簡単にレポートにすることが可能です。
連携する多数のプラグインがある
SalesforceはSFAの中で歴史も長く、多くの導入数を誇ります。
よって多くのプラグインが開発されています。
機能例を以下に挙げます。
Salesforce CPQ
Sales Cloudのデータから見積もり提案書や請求書作成を実現できます。
Pardot
Pardotはマーケティングオートメーションという、マーケティング支援機能を有するソフトウェアです。
Pardotを利用してSales Cloudとデータを同期すれば、マーケティング部門と営業部門双方でリード情報が共有可能になり、両部門同意の元で効率的にオンラインキャンペーンを企画、実装することができます。
参考リンク:マーケティングオートメーションとは?
多言語対対応
Salesforceの言語対応は大変優れていて、グローバルなビジネスを行う場合に不自由なく利用できるよう配慮されています。
言語サポートには、次の3つのレベルがあります。
完全サポート言語(18言語)
Salesforce機能とUIテキストすべてが選択した言語で表示される
エンドユーザー言語(17言語)
会社で使用される言語以外を選択(異なる言語を使用する組織などがある場合)
プラットフォーム専用言語
Salesforce でデフォルトの翻訳が提供されない場合に使用
グローバル企業にとって多くの言語にサポートしているという点も、製品選択の重要ポイントとなるのは、言うまでもありません。
Sales Cloudの弱み、課題
残念ながら、Sales Cloudを導入しても、使いこなせない企業もあります。
どういった場合が考えられるでしょうか。
高額製品かつ導入時のカスタマイズ対応がほぼ必要
クラウドサービスだから初期投資なしで安価で導入できるというのが、元来Salesforceの評判でしたが、使い続ける限りランニングコストはかかりますし、最近では完全無料のSFA製品や、機能を絞った競合製品も登場しています。
ノンカスタマイズで簡単に導入できるので追加費用は不要、というのがSales Cloudの推奨シナリオですが、実際には素のままで使用する企業はほとんどなく、カスタマイズを行うために画面開発などの追加作業が生じていることが、口コミからも明らかです。
カスタマイズも、多少のマクロ的な設定を入れる必要が生じることもあり、Sales Cloudの管理経験者やITスキルに明るい人がいない場合は、フルに機能を使いこなすのは難しいかもしれません。
日本企業には多機能すぎる
すべての機能を使いこなせれば良いのですが、海外企業ほど営業プロセスが共通化できていない日本企業には、Sales Cloudの多機能ぶりが”帯に短し襷に長し”の状態です。
営業活動に関するデータ管理を豊富な機能でカバーできる実力がある一方、使い始めたユーザーにとって取っつきにくい印象が出てしまうことは、高機能ソフトウェアの宿命です。
また、もともと海外の製品ということもあり、深刻な問題が発生した時のサポートなどは海外のSales Force拠点から対応に当たることがあります。
国内ソフトウェアベンダーとは異なるトラブルに出くわしてしまうこともあるようです。
Sales Cloudの競合製品の評判は?
代表的なソフトウェア一覧
SFA導入の際、よく名前を聞かれるソフトウェアを挙げてみました。
Hubspot CRM
無償ソフトウェアであることが最大の特徴。
小規模企業を想定した設計ですが、Hubspot社製の他モジュールソフトと連携が可能です。
UIもすっきりと分かりやすく使用できるソフトウェアです。
MS Dynamics365
マイクロソフト社のSFAです。
最大の特徴はマイクロソフト社のOffice製品との親和性の高さ。
Office製品のクラウド化も進み、SFAとして機能強化されています。
金額をSales Forceと比較しても高いものではなく、7,070円/ユーザーから利用可能。
Oracle Sales Cloud
金額は7,800円~/ユーザーです。
クラウドとオンプレミスを併用できる点、Sales Forceに負けず劣らず各モジュールのラインナップが充実している点が特徴。
また、もともとミドルウェアの最大手であり、ソフトウェアの基礎品質が安定していると評価されています。
Sugar CRM
オープンソースソフトウェア(OSS)のSFA。
名前の通り、ソースを公開しているので開発者は自由に修正や機能追加などを行うことができます。
OSSとして使うコミュニティ版は無償で、有償版は52USドル~/ユーザーとなっています。
OSSながら、機能の豊富さはSales Force並みと言われています。
eセールスマネージャー
日本発のSFAで、金額は11,000円/ユーザー。
基礎的な機能を網羅したうえで、ユーザー側による項目のカスタマイズが柔軟に行えます。
業界業種によって営業プロセスが異なり、記録したい内容は異なります。
その要望をそれほどのIT技術知識がなくても、エクセルの延長的な操作でカスタマイズが可能です。
また、何よりサポートが全て日本語で行える点、チャットなどの素早い対応が評価されているようです。
Sales Cloudはどんな企業におすすめか
SFA+アルファが必要な企業
Sales Cloudや様々なデータを貯めて、抽出や分析を行うことができます。
- 営業活動に関する細かい分析
- 他部門との連携支援機能
- 顧客のアフターフォローや引合対応力の向上などに力を入れたい
と言った場合に、各々対応できるソフトウェアが豊富です。
ご希望通りのカスタマイズが可能になるでしょう。
規模が大きな企業やグローバル企業
規模が大きな会社やグローバル企業では、システムを利用する事業所が多岐に渡ります。
複数言語で利用する可能性も上がるため、Salesforceのような多言語対応を基本としているソフトウェアを使うことが必要になることでしょう。
Sales Cloudの導入を成功させるためには
Sales Cloudを導入したのに、宝の持ち腐れになってしまい、継続利用を断念してしまうのでは残念です。
企業としてSFAなどのシステムを導入する際は、多額の投資を行う事となります。
前述したように、Sales Cloudは安価なシステムではありません。
その投資が無駄にならないように、最大の目的である「営業効率UPとさらに高度な営業組織への変革」を必ず実現しなければなりません。
以下に、成功するために意識すべき点を見ていきましょう。
他SFA製品とのポジショニングの違いを理解する
Sales Cloudは、車に例えるならば高級外車の部類に入ります。
その一方で、同業他社のSFAはライセンス無料で提供するソフトウェアも存在します。
導入にあたっては、「なぜSalesforceなのか?」「他のSFAソフトウェアでまかなうことはできないか?」を詳細に比較検討することが大切です。
- 自分達が必須とする機能としてどこまでが必須か
- 将来、さらに発展的な機能を持たせる可能性はどの程度あるか?
- その優先度、実施予定をどのように考えているか?
など、導入後の自社のゴールをよくイメージしておかなければいけません。
つまり、ITシステム部門がソフトウェアの性能だけを比較して選定することは避けるべきです。
- 実際に使う営業部門の現場の声
- 営業部門幹部の求めている利点
- 経営者が求めている利点
をよく汲み取った上で、最終的にIT部門が選定の結論を出すというフローが、あるべき流れであると言われています。
ひとつの部門やツール選定プロジェクトメンバー主導で決めることで、導入後に欲しい機能が実装できない、などという事態になることも良く起こるようです。
大きな買い物であり、経営課題に貢献するための有益なツールにするために、選定分析を入念に行ってください。
営業活動を分析するチームが必要
Sales Cloudのデータをリアルタイムに分析し、MAやERPと同期を取って他業務にも生かすために、営業支援部門など営業活動を分析する専門チームを設置しましょう。
導入後、会社として想定した理想的な活用方法と現状に乖離がないかを、確認する枠組みが必要です。
実際の運用に入った後で、問題点となる詳細課題をすべて見通すことは不可能です。
だからこそ、運用全体を俯瞰する担当が必要で、その担当部門が現場に対してヒアリングができ、改善要求を行えるような合意を取っておく必要があります。
部門間の連携調整などは、組織が大きくなればなるほど難しくなるもの。
一番簡単なのは、経営者からの号令です。
「SFA導入を成功させるために行う重要な業務」として経営者から社員にはっきりと認識させることが効果的になる事でしょう。
営業情報の共有を社内に根付かせること
営業情報が営業担当個人にクローズしているようでは、いかなるシステムを導入しても失敗します。
まずは営業組織内からSFAで営業情報の見える化を始め、さらにはマーティング、インサイドセールス、財務などの他部門もSales Cloudを通して営業情報を共有することに慣れることが肝心です。
また、SFAを活用できるように営業現場の活動を徹底させるのと同時に、連携部門にその効果を享受させるため、連携先でのアクションも具体的かつ計画されていなければなりません。
この仕組み作りとチェックが、最終的な成否に直結します。
SFA導入の成果は計画性と活動の徹底度にあり
ここまでSalesforceのSales Cloud導入に関して、
「SFAとは何か」「Salesforceについて」をご紹介しました。
SFAを導入するためには、組織としてのゴールを設定してそれに見合う機能を備えるソフトウェアを選定することが必要。
また、ツール選定時には「現場にとって使いやすいものであるかどうかを最優先させるスタンス」で、周囲の部署の合意ありきで進めましょう。
各部門が連携し、会社一丸となれば最適な答えが見つかる事でしょう。