イシグロ株式会社 様

営業現場の動きを「見える化」できたことで、商談の進捗状況や取引履歴の瞬時の把握が可能に。eSMが経営戦略や営業力強化を支援。

2009年に創業70周年を迎えたイシグロ株式会社様は、パイプやバルブといった建設に必要な配管資材の流通・販売を手がける商社。同社は顧客の注文に即応する在庫能力と、全国に広がる販売ネットワークに磨きをかけ、ビジネスを拡大してきた。 イシグロ株式会社様はeセールスマネージャーを2007年に導入。営業力をよりパワーアップするためのツールとして使いこんでいる。営業日報の作成・提出を効率化しただけでなく、電子化された情報を全社でリアルタイムに共有し、スムーズな顧客対応につなげている。 また、営業人材の育成にもeセールスマネージャーを活用。詳細な導入背景や、プロジェクトの推進経緯、社内で起きた利用開始後の変化について、同社営業本部 副本部長兼首都圏ブロック長 執行役員の長谷川 勝美氏にお話を伺った。

イシグロ株式会社様の概要

御社の事業概要をお聞かせください。

長谷川:弊社は、高層ビルやプラントなどの建築物に欠かせないバルブやパイプから水道の蛇口まで、数千種類にのぼる商材を取り扱う、各種バルブ・総合配管資材商社としてビジネスを展開しています。 強みは、注文に即応するための数万点規模の在庫能力、そして迅速・確実なサービス提供を実現する全国規模の販売ネットワークです。 創業は昭和14年(1939年)。おかげさまで今年70周年を迎えることができました。拠点や社員数の増加にともなってこれまで何度かグループ会社と経営統合を行い、現在の体制に至っています。なお、近年は商品のOEM輸入など、海外展開にも力を入れています。 販売チャネルは大きく3つあります。「卸売り」「ユーザー直販」「建設・プラント設備関係への販売」です。そのうち、卸売りが売上の約4割を占めていますが、近年は国内の工場建設といった大型案件の受注が堅調です。

eセールスマネージャー導入の背景

営業活動および業務報告の流れについてご説明ください。

長谷川:営業活動は、全国を「北海道・東北」「本社・首都圏」「北関東」「関東」「中部」「西日本・九州」の6つのブロック体制で推進されています。営業担当者は外勤と内勤を合わせると、全国で約350名です。 営業日報は、商談進捗状況の管理だけでなく、全社的な営業戦略の立案・推進に必要不可欠な情報源であり、その作成と提出を義務付けています。各ブロックにある営業所、支店といった拠点ごとに、日報の情報をまとめ、それをブロックごとに集約・チェックし、最終的に本社営業本部まで必要な情報をあげるという流れが基本です。 また日報からトピックスとなる重要情報を抜き出した週報を、拠点およびブロックそれぞれで作成し、別途、本部に集約しています。

eSM導入以前はどのような課題を抱えていたのでしょうか。

長谷川:本部や拠点にとって、日報関連業務における課題はふたつありました。ひとつめは「スピード」です。業務内容や人員の拡大に伴い、各営業ブロックの連携や情報の共有化が困難になっていました。従来の日報は紙ベースだったので、緊急案件でない限り、営業本部に届くには、少なくとも一週間を要しました。 各営業担当は一人で複数の顧客、中には70社~80社を担当している者もいます。そのため本部に集約される日報は、相当のボリュームに達します。拠点間での紙原本の発送および保管業務も煩雑になっていました。この「管理の煩雑さ」が第2の課題でした。 さらに予実管理も改善すべき重要な課題でした。工場建設などの計画は長期間に渡るため、受注数や納品数の正確な管理が困難です。予実管理ではデータの細かい把握が必要だったのです。 つまり「日報関連業務の改善」と「予実管理の改善」の2つのテーマがあったのです。

営業の担当者レベルでの課題について具体的にお聞かせください。

長谷川:営業の現場からは、効率的にお客様を訪問するため、日報作成時間をなるべく短縮・効率化し、お客様と接する時間を増やしたい、という要望が長年ありました。 また、担当者間での業務の引き継ぎが発生した場合、お客様とのそれまでの商談や取引の経緯といった履歴情報を時系列で整理していないと、すぐに把握できません。前任者が個々に引き継ぎ書類を作成していましたが、緊急時は対応に苦労しました。

課題の解決に向けて

課題に対し、どのような対策が必要だったのでしょうか。

長谷川:営業に手間をかけさせず、日報を作成・集約できる方策と、顧客情報を全社で共有化し、履歴管理を効率化する仕組みが必要でした。そのためには、これまでの手書き日報をペーパーレス化し、標準化するという業務プロセスの見直しが必要でした。

eセールスマネージャーを選定したポイントについてお聞かせください。

長谷川:重視したのは、実際に現場で活用する営業担当者の声です。eセールスマネージャーは必要な項目をプルダウンメニューから選択する方式なので、報告書を素早く作成できると、現場からは高く評価されました。 システム面では、スクラッチ開発ではなく、eセールスマネージャーの標準機能を、なるべくそのまま活用したいと考えていました。もし、複雑な業務ロジックに合わせてソフトウェアをカスタマイズすれば、将来的にシステム更改の都度、カスタマイズをかけ続ける負荷が生じてしまいます。 営業および、それをサポートするシステム部の要望などを総合的に判断した結果、eセールスマネージャーの採用に決定しました。

eセールスマネージャーの導入において

eセールスマネージャーの利用開始はいつからでしょうか。

長谷川:2007年11月からです。製品の比較検討を始めてから、ほぼ1カ月後でした。まずは日報業務の改善としての利用から着手しました。 営業担当を中心に、システム担当者を加えて編成したプロジェクトチームを発足させました。ユーザー側である営業担当者を中心に要望をまとめ、それらをシステム部で要件を整理し、導入準備、導入後のフォローを行いました。

営業中心のプロジェクトチームを編成した理由について教えてください。

長谷川:営業担当者の全員が使わなければ、ツールを導入しても意味がありません。現場の理解を得られなければ、正しい数字を入力してもらえませんし、数字が適当では分析した結果も当てになりません。だからこそ、押し付けではなく、営業現場主導で導入を進めることにこだわりました。

全社同時の利用開始だったのでしょうか。

長谷川:いいえ、導入は段階的に行いました。最初に、本社で3カ月ほど日報作成を中心に活用を開始し、そこで得られた改善点を吸い上げて、システム部やソフトブレーンにフィードバックしました。その上で、システムを全国の拠点に水平展開していきました。

使い方はすぐに現場に定着したのでしょうか。

長谷川:ベテランの営業マンの一部には、慣れ親しんだ手書きに執着する人がいたのも事実です。しかし「営業が効率的になる仕組み」を丁寧に説得することで理解者は着実に増えていきました。

eセールスマネージャー導入後の効果と今後の活用法

導入による効果について具体的に教えてください。

長谷川:ツールの導入目的やメリットが、現場に理解されるようになるにつれ、自発的に使いこなそうという社員が増えてきました。マネージャーがWebポータル画面にアクセスすると、過去に提出した日報件数が表示されますが、手書きだった時代よりその件数が増加しています。導入以前はデータ化さえできていなかったので厳密な数値比較はできませんが、「日報の提出数≒訪問件数」と見なせるため、活動量は確実に増えているといえます。 またこれまで蓄積してきた情報をシステム上に再入力する作業も完了しました。全社の日報の電子化も済み、現在では得意先コードはすべてeセールスマネージャー上に移行されています。

マネージャーの方々の反応はいかがでしょう。

長谷川:営業担当者に対しての具体的な指示を出しやすくなりました。「受注金額がいくら以上の案件は、場所長が直接訪問しなさい」といった具合です。従来であれば、案件別の受注金額を知るには紙の報告書などをめくって確かめる必要がありました。しかし、そこで手間取れば、競合他社に先を越される可能性も否めません。案件や顧客情報を素早く共有できるメリットは機会損失の低減にも寄与しています。 訪問頻度もスケジュールや日報から見えてきました。現在は、より定量化された情報に基づいた、戦略的なアプローチを検討できるようになっています。

データを正確に入力する習慣は、どのようにして徹底しているのでしょうか。

長谷川:仮に適切にデータが入力されていないと、拠点・ブロック・本部と集計していく中で、「ちょっとこれは変だな」という、実状と乖離した数字が必ず出てきます。すると上長から、入力した当人に対して「この数字の出処はどこだ」というように指摘が入ります。このため、現場サイドにおいても、「入力するデータの品質が重要だ」「データをきちんとメンテナンスしなければならない」というマインドが定着しつつあります。

営業担当者の人材育成にも効果がありそうですね。

長谷川:ある会議の席でしたが、拠点長がeセールスマネージャーから、若手営業担当者のスケジュール表を出力して回覧し、「こういう予定やペースでお客様を回っていたら、一日に数社しか回れないぞ」と指摘しているケースを見かけました。「こういうルートで30分早く出発したほうがよい」といったように、ベテラン社員の営業ノウハウを若手に伝える際の資料として活用されていたわけです。定量的なデータを用いていますから、訪問件数も明らかですし、指導が具体的になります。

より積極的な営業姿勢に変わってきたといえるでしょうか。

長谷川:日報が手書きだった頃は、せっかく書いた報告書を上長が本当にきちんと見てくれているかどうかはっきりしませんでした。「どうせ見ていないのだから」と心のどこかで思っていれば、日報を作成するモチベーションも下がってきます。 ところが今では、eセールスマネージャー上で公開され、前述のように会議の場でデータが取り上げられたりするようになっており、「自分が見られている、自分の意見が組織のために役立っている」という点で、プラスの作用がもたらされていると思います。

業務の引き継ぎはどうでしょうか。

長谷川:円滑になっています。eセールスマネージャーに案件内容や訪問日時、担当者、打ち合わせ内容などの今までの履歴がすべて残っているので、すぐに案件の進捗を把握することができます。瞬時に必要な情報を入手することができるので、例えばお問い合わせが入った場合でも、参照権限のある人であれば誰でも内容を把握できるので、迅速に対応をすることが可能となりました。これは紙ベースでは極めて難しい作業でした。

今後はさらにどう活用されていく考えですか?

長谷川:現在、もうひとつの重要なテーマである予実管理との連携強化を進めています。 弊社では、先行管理によって毎期の予算を管理しています。建設案件を例にとると、契約段階で予算計上された受注金額から、毎月の販売実績を差し引いて受注残および、残りの営業期間の売上目標を立てていく方式です。 今後は、より精度の高い受注残管理を行うために、品目別の原価や在庫状況をはじめ、過去の取引履歴情報などを、営業目標や戦略の検討材料にタイムリーに加えられる仕組みを実現したい、と考えています。

ソフトブレーンへの信頼や要望・期待

ソフトブレーンのコンサルティングはいかがでしょうか。

長谷川:導入当初からシステム部と連携をとり、サポートしてもらっています。特に、2009年1月には、先行管理データを、eセールスマネージャー上に入力する際に、コンサルティングを入れて、マニュアルを作成するなど、随所で支援を受けました。 市場動向や技術の進展によって、業務やシステムは常に進化し続けています。将来的には、営業支援系と基幹系のシステムとをうまく結び付けていきたいという構想を持っています。システム間の連携などの場面では知恵を貸して頂ければと思っています。

ソフトブレーンへの期待をお聞かせください。

長谷川:弊社では、営業担当者がさらにツールを使いこなし、「もっとこういう風な機能があれば、営業がしやすい」といったユーザーの意見がどんどん営業本部に寄せられるようにできれば、と考えています。そうした声をもとに、機能や使い勝手を今まで以上に洗練させて、営業活動を活性化させたい。ソフトブレーンには、今後ますますの機能やデザインの強化を期待しています。

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