テレワーク(リモートワーク)とは?基本から導入の秘訣まで解説
国内でも普及してきたテレワーク(リモートワーク)。しかし、メリットを多く得ている企業もある一方で、まだまだテレワークの恩恵を得られていない企業が多数派です。
実際、総務省によるとテレワーク導入率は19.1%(2019年時点)。内閣府によると、新型コロナウイルス流行時に、一時的にでもテレワークをした企業は34.5%にとどまります。
そこで今回、テレワークに役立つツールなどを7,000社以上に導入してきた弊社が、テレワークとは何かといった基本から導入すべき理由、必要な知識や成功・失敗事例をまとめて解説します。
テレワークの基本や成功する導入法が明確になるので、ぜひじっくりお読みください。
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そもそもテレワークとは?リモートワークなどと何が違う?
簡単に説明すると、テレワークとはオフィスから離れた場所で働くこと全般を指し、業界や職種に合わせて3つのスタイルが確立されています。より正式には、以下の日本テレワーク協会の定義が代表的です。
“テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです”
要するに、現代の技術を活用してより柔軟な働き方を実現し、働き手不足の改善や生産性の向上に努めようというわけです。テレワークのメリットやデメリットの解決法などについては、「テレワークのメリット」や「発生しがちな問題の対応策」で詳しく解説します。
ちなみに、テレワークという言葉は略語ではなく、Tele(遠い)にWork(働く)という言葉を組み合わせてできています。遠く離れた人と話す機械をTelephoneと表し、映像を遠くに送ることをTelevisionと表したのと同じ感覚の言葉です。
また、テレワークと似た言葉にリモートワークという言葉がありますが、ほぼ同義語です。言葉の成り立ちからしてほぼ同じで、remote(遠隔・遠い)にworkが加えられてできています。
一方で、在宅勤務やモバイルワークといった言葉はテレワークの1種になり、それぞれメリットや適した職種が違うので区別をつけなければいけません。そこで、各テレワークの詳細を紹介していきます。
3種類あるテレワーク(リモートワーク)を使い分けよう
テレワークのスタイルとは、以下3つに分類できます。
- 在宅勤務
- モバイルワーク
- サテライトオフィス勤務
本記事は後述する「テレワークに取り組まざるを得ない理由」や「導入に必要な全知識」など、テレワーク全般について解説するので、上記3つの説明は簡単に区別がつく程度にとどめます。より詳しく知りたい場合は、専門的にまとめた記事のリンクを用意しているのでご覧ください。
在宅勤務
在宅勤務とは、パソコンやネット回線、勤怠管理システムなどを用意して、従業員に自宅で働いてもらうテレワークです。
出社の必要がないので、従業員にとっては育児や介護と仕事を両立しやすい働き方といえます。企業にとっても育児や介護で自宅にいざるをえない従業員をより有効活用できたり、交通費やオフィス代を削減できたりといったメリットがあります。
一方で、セキュリティ対策をしていないと機密情報流出といったリスクがあり、就業実態を把握しづらくなるデメリットもあります。より詳しい在宅勤務のメリットや適した職種、導入方法などは、以下の記事でご確認ください。
モバイルワーク
モバイルワークとは、電車の中や飲食店などで一時的に働くテレワークです。外出が多い営業パーソンなどがスキマ時間を活用できるようになるので、生産性が上がります。直行直帰を認めているなら、交通費削減も可能です。
一方で、在宅勤務と同じくセキュリティ対策はきちんとしなければなりません。不特定多数の人に会話を聞かれたり自社データを見られたりする恐れがあるためです。
モバイルワークの詳細や課題については、以下の記事に詳しくまとめています。既存の人材で収益アップを目指したいなら、ぜひ参考にしてください。
サテライトオフィス勤務
サテライトオフィス勤務とは、レンタルオフィスやコワーキングスペースといったオフィス機能のある場所で働いてもらうスタイルです。自社で借り上げた物件でサテライトオフィスを作る手段もあります。
先に紹介したモバイルワークと違って、コピー機やネット回線などのオフィス機能が充実しており、一定のセキュリティ性もあるのがメリットです。もちろん自社オフィスほどのセキュリティ性はなく、モバイルワークのようにどこでも仕事ができる自由度の高さも下がります。
ちなみに、日本で初めてテレワークを始めたNECが導入したのは、サテライトオフィス勤務でした。ある程度場所と時間を共有して働いて欲しいが、自社オフィスでの定時勤務が負担で人材流出しているなら、導入する価値があるでしょう。
サテライトオフィス勤務についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
今後テレワークを導入せざるを得ないたった1つの理由とは?
テレワーク(リモートワーク)が多くの企業で取り入れられ、政府も積極的に推進する理由とは、ずばり労働力の不足です。
今後、深刻な労働力不足が発生するのは、生産年齢人口(15~64歳の人口)の変化から明らかです。国勢調査などから作成された将来の推計人口を見てみましょう。
2015年に7,629万人だった生産年齢人口は、2040年には5,787万人、2060年には4,418万人と予測されています。ちなみに、生産年齢人口のピークは1990年で8,590万人でした。今の働き方を続けていると自社の規模は維持できず、廃業のリスクもあるわけです。
そこで、実は日本で40年近い歴史があり、労働力の維持に期待できるとわかっているテレワークを活用しようというわけです。もちろんテレワークの導入には手間がかかり、デメリットもあります。
まずは、全体的にどのようなメリットとデメリットがあるかを解説していくので、自社にどのように導入するかを判断していきましょう。
テレワーク(リモートワーク)のメリット・デメリットとは?
テレワーク(リモートワーク)のメリット・デメリットとは複数あるもので、自社の規模や年間の採用人数しだいで、導入後の影響が変わってきます。メリット・デメリットを一度きちんと理解することで、テレワークを導入する職種や対象者などが見極められるので、詳細を解説していきます。
テレワーク(リモートワーク)のメリット4つ
まずテレワークのメリットから紹介していきます。具体的には以下4つです。
- 人材確保
- 生産性の向上
- 各種経費の削減
- ワークライフバランスの向上
上記4つのメリットは、いずれも今後の日本社会で経営を続けていく上で重要なもので、テレワークを導入する直接の理由になります。それぞれの詳細をみていきましょう。
人材確保
テレワークを導入しておくと、人材の確保に有利です。テレワークの選択肢があると、出産や育児、介護などを理由に自社を離れる人材を引き止められる可能性が出てきます。また、時間と場所を選ばないというテレワークの特徴から、従業員の居住地域を問わず多様な人材を集められます。
実際下図のとおり、2020年の時点でこれからの働き盛りの世代は、テレワークを歓迎する傾向があるのです。
今後の経営を維持するにあたって、ミレニアル世代(2020の時点で25,26~40歳)やZ世代(2020年の時点で24,25)を必須の人材です。そして、ミレニアル世代の半数以上はテレワークを歓迎しています。Z世代も半数近くがテレワークを歓迎しており、歓迎しない層は最も少ない世代です。
加えて、勤続や転職を検討する際に、働き方の柔軟性を重視するという人も増えています。実際、下図のとおり、調査対象666名のうち96%が重要視するという報告もあるのです。
新卒・中途採用をするなら、テレワークを含めた働き方の柔軟性はぜひとも訴求したいところです。
また、副業・兼業も働き方改革で推進されており、副業を解禁して他業界の優秀な人材を集める企業も増えてきています。テレワークの選択肢を提示できれば優秀な副業者を迎えられる可能性が高まります。2017年の総務省の報告で、 約270万人(2017年)いるとされる副業者を呼びこめるメリットもテレワークにはあるわけです。
生産性の向上
先述のとおり、テレワークを導入すると従業員の生産性が向上します。移動していただけの時間を業務にあてたり、仕事中に邪魔が入らないので集中して取り組めるようになったりするためです。また、育児や介護でオフィス通いや通常の出勤時間に働くのが難しい従業員の流出も防げます。
実際、テレワークをした内のおよそ4人に1人がモチベーションを上げ、モチベーションを上げた人の約80%が生産性を上げたという報告もあります。
上図のデータはポジティブな結果が強く出ていますが、ネガティブな結果に終わった人もいます。テレワークの選択肢や種類を吟味すると最適な結果が得られるので、全従業員が働きやすい環境を作っていくのが重要です。
いずれにせよ、企業としてはテレワークで従業員のパフォーマンスを最大化につなげられ、従業員はモチベーションアップや資格獲得の時間確保ができます。
ワークライフバランスの向上
テレワークを導入すると、従業員のワークライフバランスの向上にも期待できます。適切なテレワークの仕組みを実現できれば、プライベートと仕事を両立しやすくなるためです。
そして、企業にとって従業員のワークライフバランスを上げることは重要といえます。というのも、働く世代で収入よりも重視することがあると答える層が増えているからです。たとえばミレニアル世代(2020年の時点で25,26~40歳)で、収入より重視しているものがあるとした層は、下図の割合で存在します。
半数以上が収入以上に重視していることがある状況です。ちなみに、重視していることの内訳は下図のとおりです。
上位の項目からは、働きがいや仕事をコントロールしたいという欲求が読みとれます。特に「残業がない/すくないこと」という項目からはワークライフバランス重視の考えがうかがえます。そして、在宅勤務した人の83%が、ワークライフバランスが向上したという報告もあるのです。
したがって、テレワークを導入すると従業員のワークライフバランスの向上、ひいては働きがいの提供と生産性アップにつながってきます。
各種経費の削減
交通費や賃貸料金といった経費を削減できるのもテレワークのメリットです。たとえば営業や出張での移動が少なくなれば、交通費やガソリン代、車両維持費などが削れます。
また、オフィスを借りている場合は規模を縮小して賃貸料金を下げられ、電気代なども削減可能です。たとえばテレワークを推進している富士通は、2023年をめどにオフィスを5割程度にへらして、オフィス代と通勤定期券代をへらすとされています。
テレワーク(リモートワーク)の3つのデメリット
テレワークにはデメリットもあり、具体的には以下3つが代表的です。
- ツールや機材の導入などが必要
- 就業規則や人事評価制度の変更
- 導入費用の発生
それぞれ詳しく解説していきます。
ツールや機材の導入などが必要
勤怠管理システムやコミュニケーションツール、セキュリティの観点からシンクライアントなどの端末を準備する必要があるといったデメリットがあります。
もちろん、ただ単純に必要なものを準備するだけでなく、研修を通して使い方を覚えてもらう必要もあるのも忘れてはいけません。研修をろくにしなかったためにかえって生産性が下がった企業もあります。実際、テレワークを実施した企業において、生産性が上がった企業が27.3%に対して、生産性が下がった企業は30.7%だったと日本経済新聞が報告しています。
就業規則やルールを含めてテレワークに慣れていれば、後述する成功企業のように生産性は上がるはずなので、ツールの導入と研修を丁寧におこなうのが重要です。
就業規則や人事評価制度の変更
働き方が変わる以上、就業規則や人事評価制度の変更が必要になります。変更しないと法律違反を指摘されるリスクが高くなり、テレワーカーの評価が適切でないと生産性の低下や退職者の増加につながり得るからです。
後述する「テレワークの管理体制」や以下の記事を参考にして、変更を忘れずにしてください。
導入費用の発生
テレワークの導入時にはなにかと費用がかかります。ツールや機器類はもちろん、コンサルタントの協力を仰がなければならない場合もあるでしょう。
中長期的にみれば、交通費や光熱費などの削減によるメリットが出てきますが、導入当初は費用が多くかかるわけです。なお、詳しくは後述しますがツール導入に際しては補助金も使えます。初期費用をおさえることも可能なので、ぜひ参考にしてください。
テレワーク(リモートワーク)導入に必要な全知識
テレワーク(リモートワーク)を導入するには、やるべきことが多くあり、複数の部署との連携が必要です。
たとえば、目の届きにくい環境で働かれるため、就業規則や人事評価といった制度を見直すべく人事部の協力は必須です。また、自社に最適なツールの導入が必要なので、情報システム部などとの連携も必要でしょう。
他にも、テレワーク導入に着手する前に知っておくべき知識はあるので、以下の3つに分けて紹介していきましょう。
- 導入手順
- 助成金
- 管理体制
いずれも納得のいくテレワークの導入に必須の知識なので、詳しく解説していきます。
導入手順
テレワーク導入の手順は多数のステップに分かれる複雑なものです。しかし、厚労省や総務省が、業界や企業規模、職種に合わせてわかりやすい手順書を公開しているので、ぜひ活用しましょう。
テレワークではじめる働き方改革 │厚生労働省
情報システム担当者のための テレワーク導入手順書│総務省
コンサルタントに依頼するのも1つの手段です。次に紹介する助成金の対象になります。
助成金
テレワークのデメリットの1つに費用の発生がありますが、助成金で負担を軽減できます。 利用できるかどうかは、自社の所在地や企業規模しだいです。しかし、国がテレワークを推進している関係上、なんらかの助成金が利用できる可能性は大いにあります。
なお、以下の記事に助成金をまとめているので、ぜひテレワーク導入前に確認してみてください。
管理体制
後述するテレワークで発生しがちな問題とも関連しますが、テレワークができるツール導入やルールをつくる以外にも管理体制を整えなければいけません。具体的なポイントは以下の3つです。
- 勤怠管理ツール導入
- 勤怠状況の確認方法の決定
- 時間外労働時間(残業)の上限規制 の遵守
上記は働きがいや法令遵守と密接に関係するので詳しく解説していきます。
勤怠管理ツール導入
テレワークの導入ステップを遵守すれば導入されるはずですが、勤怠管理ツールは必須です。いつどこで働いているかを明確に確認しづらい以上、無理な働き方をされていないか、そして残業代を算出するためにも勤怠管理ツールは必要になります。
特に、働き方改革で時間外労働の上限が変わっており、労働基準法を遵守させていることを証明できるようにしておくのは需要です。詳しくは後述する「時間外労働時間(残業)の上限規制」をご確認ください。
なお、おすすめの勤怠管理ツールについては、以下の記事が参考になります。
勤怠状況の確認方法の決定
テレワークの頻度が多い社員の働きぶりを正確に把握するのは、正しい評価をつけたり、テレワークをしない従業員との不和を産んだりしないために重要です。
勤怠管理ツールの中には、マウスの動きを記憶するといった機能がついたものがあります。また、 キャノンITSのように原則Webカメラをつけておくルールを課している企業もあります。
いずれにせよ、テレワークのスタイルとテレワーカーに適した勤怠状況の確認方法を考えるべきです。昨今のテレワーカーの増加から各企業がシステムを出しているので、検討してみてください。
時間外労働時間(残業)の上限規制
働き方改革の一環として、労働に関する8つの法律が改正され、時間外労働(残業)に新たな上限規制などが設けられています。遵守すべき具体的なことは以下のとおりです。
時間外労働は年に720時間以内
時間外労働と休日労働の合計は月に100時間未満
時間外労働と休日労働の合計は「2か月平均」「3か月平均」「4か月平 均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月あたり80時間以内
時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6か月まで
規制前は、月45時間・年360時間の上限は大臣告示によるものでしたが、規制後は法律上の原則となります。つまり、遵守しないと法律違反です。また、複数月平均が80時間・月100時間・年720時間の上限規制は新たに設けられたものなので注意してください。
なお、上限規制は大企業においては2019年4月から、中小企業においては2020年4月から導入されています。
部署別のテレワーク成功事例3選
テレワークの導入企業は増え続けており、歴史も深くなってきているので、成功事例と失敗事例が蓄積されています。学ぶところは多くあり、社内でテレワーク導入を打診する材料にもなるので確認していきましょう。
まずは成功事例から紹介していきます。ここで紹介する企業は以下の3社です。
- 営業職(ソニービズネットワークス)
- 事務職(カルビー)
- 研究・開発・設計・SEなど(トヨタ)
さっそく上記3社の成功事例をみていきましょう。なおより成功事例を確認したい場合は、総務省のテレワーク先駆者百選などを確認すると良いです。
営業職(ソニービズネットワークス)
内勤か外勤かを問わず、営業職はテレワーク向きの職種です。内勤営業者のWeb接客やインサイドセールス、デスクワークは在宅勤務やサテライトオフィス勤務で実施できます。また、外勤営業は外出先でモバイルワークで資料の作成や精算業務などが可能です。
たとえばソニービズネットワークスでは、電話やメールで案件を進捗させ、Web接客で商談をしています。通勤時間をへらせたことによってワークライフバランスも改善した社員もいるようです。
営業職のテレワークを成功させるコツとしては、テレワーク用ツールの他に、SFAやCRMといったツールも導入することがあげれます。スケジュールの最適化や業務の自動化ができ、マネージャーが細かく管理しなくてもテレワークで成果を上げていけるからです。
SFAやCRMについて詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
事務職(カルビー)
食品大手のカルビーは、2014年から事務職を対象に在宅勤務を導入して成功をおさめた企業です。営業職と同じく、事務職もテレワークと相性の良い職種で、テレワーク導入ガイドにも導入ステップが多数記載されています。
カルビーの場合、前日までに許可をとり、週2日までというルールで在宅勤務を導入しているのが特徴です。なお、営業職においては以前より直行直帰のモバイルワークを認めていたとのことです。
研究・開発・設計・SEなど(トヨタ)
トヨタといえば製造業の大手で、いかにもテレワークと相性が悪そうですが、実際には2017年の時点で1.3万人に在宅営業を許可しています。さらに2020年の9月からは、技術職にも在宅勤務を認めており、工場勤務社においても導入できてないか検討しているとのことです。
研究や設計といった職種は、PCやソフトなどの環境さえ整えてしまえば自宅などでも仕事ができるので、実はテレワークと相性の良い職種です。実際、先述のテレワーク導入ガイドには研究職などへの導入手順が記載されています。
工場ラインなどでの手作業がある職種については、トヨタの結果がでれば参考にできると考えられます。
発生しがちな問題と失敗事例3選
テレワーク(リモートワーク)の歴史が深まっているため、発生しがちな問題と失敗事例も蓄積されているので、紹介していきます。まずは、発生しがちな問題を見ていきましょう。
テレワークで発生しがちな問題点とは?
複数の調査報告を確認すると、スタイルを問わずにテレワークで発生する問題は以下が代表的です。
- コミュニケーションが取りづらい
- セキュリティ上のリスク
- チームワークに悪影響
- 仕事に集中できない
- 長時間労働になる(部下の時間管理をしにくい)
- 適正な評価を受けられない
実際、 3,094人を対象にした調査報告では上記項目が上位です。
上図の黄色のラインはあくまで不安に思っていたことで、緑のラインが実際にデメリットに感じたことです。仕事に集中できる環境や長時間労働への不安は的中しています。環境づくりは、社員にゆだねざるを得ませんが、他社員の成功体験を共有するといった工夫で支援できるでしょう。労働時間の管理は、勤怠ツール使用の徹底などで対策できます。
なお、コミュケーションへの不安は、オンライン会議システムやチャットツールの普及でさほど問題になっていないようです。ちなみに、中小企業にしぼって調査をした場合のデメリットは以下のとおりです。
時間管理や利用条件など、管理体制上の問題が多いことがうかがえます。先述した管理体制の内容が役立つでしょう。
テレワークの失敗事例3選
成功事例ばかりではなく、失敗事例もみていきましょう。ここでは以下3つの企業の事例と対応策を紹介していきます。
- IBM !(アメリカ)
- Yahoo !(アメリカ)
- サイバーエージェント
それぞれの詳細を解説していきます。
IBM(アメリカ)
コンサルタント業界の大手であるIBMは2017年に在宅勤務を取りやめています。
2009年から約38万の従業員の内、約40%がテレワークをしていましたが、コミュニケーションに難があったようです。
コンサルタント業はチームで動くシーンが多々あるので、在宅勤務とは相性が悪かったという問題が考えられます。対応策としては、Web会議システムの導入を前提としたモバイルワークや在宅勤務も選択肢に入れることが有効でしょう。
実際、日本IBMでは2020年にコロナ禍を受けて在宅営業を基本とし、業務を続けました。テレワーク自体も1987年から取り組んでおり、一概にデメリットばかりだったわけではないと考えられます。
Yahoo!(アメリカ)
アメリカのYahoo!も在宅勤務を禁止にした企業です。別会社の経営といった、従業員のいい加減な勤務態度が原因とされています。
就業実態がつかみにくくなるのは事実なので、成果ベースの人事評価を導入したり、無作為にパソコンのスクリーンショットを取るツールを導入したりすると良いでしょう。あるいは、キャノンITSのようにコアタイムにはWebカメラを常につけていると働きぶりを確認できます。
サイバーエージェント
失敗とまではいかないようですが、社長ブログによるとサイバーエージェントは自社の強みを失うとして、おおむねオフィスで働くスタイルに戻しています。具体的には、チームワークや一体感が失われたとのことです。
一方で、テレワークのメリット自体は多数あるとして、毎週月曜を全社員原則テレワークにしたり、会議は原則Zoomにしたりして生産性を上げています。自社のカルチャーなどに応じて最適なテレワークを考えれば、なにかしらメリットを得られる好例といえるでしょう。
テレワーク(リモートワーク)で明るい企業経営を!
テレワーク(リモートワーク)の詳細や導入すべき背景、事例などを紹介してきましたが、理解は深まったでしょうか?基本的に働き手が減る中、テレワークを含めた働き方改革にいつかは取り組まなくてはいけません。
しかし、あくまでもテレワークを導入すること自体を目的にするのではなく、生産性向上を目的として、自社に適したスタイルへ改善し続けていくのが重要です。
テレワーク導入後に役立つ情報も参考にしつつ、明るい経営を目指してください。また、本記事が参考になったのであれば、ツイートやいいね!で他の人にも教えてくだされば幸いです。