テレワーク導入には就業規則の変更が必須!変更ポイントや例を紹介
働き方改革で推進され、実際に導入して成果を上げている企業も多いテレワーク。
しかし、導入するには就業規則の変更が必須です。
就業規則をきちんと整備しないと成果が上がらないばかりか、法律違反になる可能性もあります。
テレワークに関する就業規則で追加・変更しておくべきポイントや、基本的な作り方について、詳しく紹介していきましょう。
このページのコンテンツ
導入前に就業規則を整えないのはリスク多数
テレワーク導入前に就業規則を変更していないと、罰金が課せられる可能性があります。
大幅に働き方が変わる結果、労働基準法違反する可能性が生じるからです。
労働基準法第89条には、就業規則の作成義務違反に「30万円以下の罰金に処す」と明記されています。
また、テレワークの導入によって人事評価に不公平を招き得るため、従業員の意欲低下を招いたりするリスクも発生します。
会社のオフィスで働いていれば負担せずにすむ通信費や光熱費、ルーターなどの機器購入費といった負担が従業員に発生して、不満を抱かれる可能性もあります。
したがって、テレワークの導入にともなって始業・終業時間があいまいになったり、労働条件の不利益変更が発生しそうなら、既存の就業規則の項目を調整しなければいけません。
テレワーク時の機密情報の取り扱いや実施頻度などに関する就業規則も、新たに作成する必要があります。
しかし、テレワーク導入にともなう就業規則の変更にはポイントがあり、変更手順のステップも確立されています。
テレワークを本格的に導入する前に就業規則を整理すべく、具体的に変更すべき箇所や手順などをおさえていきましょう。
テレワークの詳細や利点を事前におさえよう
いきなりテレワークの就業規則の整備に着手するのでなく、テレワークという働き方の詳細やメリット・デメリットを理解しておきましょう。
一口にテレワークといっても複数のスタイルがあり、自社に最適なスタイルのテレワークの導入と、適した就業規則を用意するためです。
なお、テレワークの種類は、厚労省やテレワーク協会が以下3つに分類しています。
- 在宅勤務
- モバイルワーク
- サテライトオフィス勤務
それぞれのテレワークの特徴やメリットは、別にまとめた記事があるので、参考にしてください。
また、テレワークには利用できる助成金や導入すべきツールなど、知っておくと得をすることが他にもあります。
以下の記事に詳しくまとめていますので、ぜひ、テレワーク導入の費用負担を軽減したり、より生産性を向上させたりするのに役立ててください。
就業規則の追加や変更が必須のポイント
ここからは、既存の就業規則への追加や変更が必要になるポイントを紹介していきます。
具体的に追加や変更が必要になる箇所は、以下の3つです。
- オフィス勤務特有の業務がある場合の処遇
- 勤務実態や勤務時間、時間外労働
- 研修やOJTの体制
それぞれ詳しく紹介していきます。
オフィス勤務特有の業務がある場合の処遇
オフィス勤務をする従業員固有の負担や業務がある場合は、評価や処遇に関する就業規則の調整が必要になります。
オフィス勤務特有の負担や業務とは、たとえば突発的な電話対応や訪問客への対応などです。
テレワークは邪魔が入らず、仕事に集中できるのがメリットですが、電話や顧客の対応は誰かがしなければいけません。
したがって、テレワーク時には出来高制や成果ベースでの人事評価を導入したり、オフィス勤務特有の業務をしない分の給与をカットするなどの調整が必要と考えられます。
勤務実態や勤務時間、時間外労働
テレワークの導入で勤務実態があいまいになる場合も、既存の就業規則の変更が必要になります。
というのも、テレワークを導入すると子育てや介護と仕事を両立しやすいメリットがある分、テレワーカーの任意のタイミングで業務を中断している可能性があるためです。
業務から離れている時間は休憩時間とみなすのが一般的です。
就業規則への明示と、業務から離れていた時間を把握するための工夫やツールが必要でしょう。
また、テレワークには「働かせすぎ」のリスクもあります。
特に在宅勤務の場合、始業・就業時間が、オフィスに勤務している従業員と合いにくく、勤務実態も把握しにくいので、ルールづくりに配慮しなければいけません。
テレワーカーへの業務配分が偏って、長時間労働を引き起こさないように、確実に勤怠管理のツールを使いつつ、就業規則の変更や追加をしましょう。
研修やOJTの体制
テレワークをする頻度が高い社員は、オフィスや訪問先での研修、OJTなどを受けられる機会が少なくなるので、就業規則と研修制度の見直しが必要です。
また、テレワークをはじめてする従業員には、事前にセキュリティ対策やツールの使い方などの研修が必要です。
資料を気軽に持ち出したり、インターネットを介して情報をやり取りしたりして、社内の情報が外に出していると、企業資産が流出してしまうリスクがあります。
したがって、就業規則で研修を受けた人にのみ許可を与えるといった就業規則を設けるのが良いでしょう。
そして、テレワークをする従業員の上司や同僚にも、人事評価に不公平が発生させないための研修が必要です。
テレワークの就業規則作成の基本ステップ
既存の就業規則への追加や変更に加えて、新たにテレワーク用の就業規則を作成することも積極的に検討してください。
そのほうがヌケモレの発生するリスクが小さく、従業員にも周知しやすいからです。
テレワーク用の就業規則の作り方を、基本的な流れに沿って紹介していきましょう。
具体的には、以下の7ステップです。
- テレワークが利用できる条件を設定
- 利用上限の設定
- 就業時間の定義
- テレワークができる場所を設定
- 機密情報の取り扱い設定
- テレワーク時の費用負担の決定
- 手当の調整
それぞれ解説していくので、ぜひテレワークの実施前に作成してください。
テレワークが利用できる条件を設定
まず、従業員がテレワークに切り替える際に、許可を与えるために何をしなければならないかを決めましょう。
先述の通り、はじめてテレワークをする従業員には、セキュリティ対策やツールの使い方を覚えるための研修が必須です。
他にも、入社直後はOJTなどのためにテレワークは避けて欲しかったり、そもそもテレワークをされると困る職種もあったりするでしょう。
したがって、テレワークを希望するためには、事前研修の受講義務や入社してからの年数といった条件を就業規則で指定しておきましょう。
利用上限の設定
次に、テレワークの利用上限を設けましょう。
テレワークの頻度や期間に上限を設けていないと、組織内での業務に滞りが発生したり、従業員同士の不和が発生したりするためです。
実際、在宅勤務からオフィス勤務に復帰する期限を事前に設けていなかったために、トラブルが発生している企業もあります。
そこで、テレワークは週何回までといった条件や、在宅勤務を認める期間を明確な日付で指定する、といった就業規則を設定しましょう。
就業時間の定義
テレワークの中でも特に在宅勤務を導入する場合は、就業時間の定義を新たに設定しましょう。
在宅でも深夜労働や休日出勤が発生すれば割増賃金を支払う必要がありますが、その勤務実態を把握することが難しいためです。
深夜・休日労働を禁止にしたり、許可制にしたりといった就業規則を設ける必要があります。
なお、以下の条件をすべて満たしているなら、事業場外労働のみなし労働時間制を導入できるので、みなし労働にするのも1つの手段です。
- 私生活をしている自宅で業務をしている
- 育児や介護などで常時企業と通信できなくても良いと認めている
- 業務内容のすべてに企業からの具体的で細かな指示が必要ない
事業場外労働のみなし労働時間制を適用しても所定労働時間を超えた場合は、残業代を支払わなければいけないので、ご注意ください。
テレワークができる場所を設定
セキュリティ対策の観点から、テレワークができる場所を就業規則で明確に指定しましょう。
モバイルワークやサテライトオフィス勤務を導入する場合は、不特定多数の人に業務内容を知られる可能性があります。
在宅勤務の場合は場所に問題はありませんが、ネットを介した情報のやり取りには、定期的な注意喚起が必要です。
仮に情報漏えいにつながってしまうと、企業の信用失墜といった大きな損失が発生し得るので、事前研修と合わせてテレワークできる場所も指定しておきましょう。
機密情報の取り扱い設定
自社オフィス以外の場所で働く以上、企業の情報は必ず外に持ち出されます。
紙の資料からノートパソコンの取り扱い、繋ぐネット回線まで指定しておくべきです。
そのためには、なにが機密情報かを具体的に定義する必要があります。
そのうえで、テレワークでの機密情報の持ち出しを禁止にしたり、許可制にするなどしましょう。
テレワーク時の費用負担の決定
従業員の自宅や飲食店、サテライトオフィスには多くの場合、滞りなく働ける環境が整っているので見落としがちですが、テレワーク時の費用負担も考えて記載する必要があります。
発生する費用は、たとえばシェアオフィスの利用料や、在宅勤務時の光熱費や通信費などです。
従業員の費用負担が発生する場合は、就業規則に明記することが労働基準法で定められています。
どのような場合に、どの程度の費用負担を授業員に課すかを就業規則に明記しましょう。
手当の調整
通勤せず、事業場外労働のみなし労働時間制が導入されやすい在宅勤務を導入する場合は、手当の調整にとくに気を使う必要があります。
というのも、通勤手当と皆勤手当、固定残業手当を調整する必要があるからです。
まず通勤手当は、通勤が発生しない期間がある以上、日割りなどで通勤手当の額面を調整する必要があります。
次に、皆勤手当はもちろんテレワーカーにも支給すべきですが、電話や顧客対応の有無で処遇を差別化するなら、調整を検討したほうが良いでしょう。
最後に、事業場外労働のみなし労働時間制を採用する場合は、固定残業手当は支給しないのが一般的です。
テレワークでできる業務を明確にし、労働時間の管理がきちんできるツールや工夫を取り入れて、公平な事業場外労働のみなし労働時間制を導入しましょう。
適切な就業規則でテレワーク導入をスムーズに
テレワーク導入時の就業規則変更の必要性や変更ポイントなどを解説してきましたが、参考になったでしょうか?
今回解説した内容を簡単にまとめるので、ふり返ってみてください。
- テレワーク導入前に就業規則を整えないと複数のリスクあり
- 就業規則の変更前に、テレワーク自体について理解を深めるのが重要
- オフィス勤務特有の業務や勤務時間、研修などの就業規則項目は、調整の必要あり
- テレワーク用の就業規則は、作成のステップがあるので参考にすべき
生産年齢人口減少への対応や生産性向上のために、テレワークは早めに導入したいところです。
しかし、導入を急ぐあまり就業規則の整備を怠っては、思わぬトラブルの発生やテレワークが活用されない事態を招きかねません。
今回解説した情報を活かして、ぜひスムーズなテレワークの導入を目指してください。
また、今回解説した情報の他にも、テレワークをうまく根づかせたり、継続的に活用させて生産性を上げたりできる情報も紹介しています。
テレワークのメリットを最大化するために、ぜひ参考にしてみてください。