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ジョブ型雇用とは?導入するメリット・デメリット、企業事例を徹底解説!
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ジョブ型雇用とは?導入するメリット・デメリット、企業事例を徹底解説!

欧米企業や日本の大企業を中心に導入が進む雇用制度「ジョブ型雇用」。

新卒一括採用や終身雇用とは異なり、職務に適した優秀な人材を採用できるため、専門性を有する従業員の能力を最大限に引き出し、公平な評価制度や昨今のリモートワークに適した勤務体系を作り出すことが可能です。

しかし、単にジョブ型雇用を導入するだけでは、多様な人材が活躍できる環境作りや優秀な人材が確保できるわけではありません。
本記事では、ジョブ型雇用を導入するうえで、把握すべき雇用制度のメリットやデメリットをはじめ、先進的に導入を推進する企業の成功事例を解説します。

ジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用の定義とは?

ジョブ型雇用は、日本経済団体連合会(2020年)によって以下のように定義されています。

 「特定のポストに空きが生じた際にその職務(ジョブ)・役割を遂行できる能力や資格のある人材を社外から獲得、あるいは社内で公募する雇用形態のこと」

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/028_honbun.pdf

従来の日本の終身雇用や新卒一括採用は、安定的に労働力を確保できる一方、職務と人材のミスマッチや人材育成、高度なスキルの取得が困難な傾向にありました。 

しかし、ジョブ型雇用の導入によって、職務(ジョブ)内容を明確に定義し、その職務を遂行できる人材を※職務記述書(=ジョブディスクリプション)に基づいて採用すれば、勤務地やポスト、報酬、仕事の評価方法など、職務に適した人材の確保をすることができます。

 ※担当する職務内容や範囲、勤務地や労働時間、必要なスキル、評価基準などを明確化した書類

ジョブ型雇用が注目される背景とは

近年、ジョブ型雇用が注目されるようになったのはなぜでしょうか?
それは、日本を取り巻くビジネス環境が以下のように変化していることが背景として考えられます。

ビジネス環境の変化や国際競争力の低下

市場や産業の新陳代謝が世界各地で急速に進むなか、日本企業はビジネス環境の変化への対応や国際競争力の低下が喫緊の課題として挙げられます。

スイスのビジネススクール「IMD」(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が作成する「世界競争力年鑑」では、日本の総合順位は63カ国・地域中34位、アジア・太平洋地域14カ国・地域でみても10位と低迷しており、国際競争力や企業の優位性で他国に遅れをとっていることがわかります。

国際競争力や企業の専門性を向上させるためにも、従来のメンバーシップ型雇用ではなく、事業戦略に基づき、与えられた職務や役割を遂行できるジョブ型雇用を採用することで、優秀な人材の確保が一層求められているのです。

ダイバーシティ(多様性)の浸透

近年、年齢や性別(および性自認)、国籍、ライフスタイルなど、人材の多様性を受け入れ、すべての人が組織に貢献できる環境作りが不可欠とされています。
したがって、多くの企業では、これまで当たり前だった終身雇用や新卒一括採用など、年功序列を前提とした雇用システムが価値観の変化に伴い見直されつつあります。

ジョブ型雇用は、勤務地や職務を限定的にするだけでなく、政府の掲げる「働き方改革」で求められる長時間労働の是正やワークライフバランスの推進につながるとして、注目が集まっています。

最新技術を有する専門職の不足

現在のビジネスシーンでは、AI(人工知能)やビッグデータ解析をはじめ、自動運転やIoT、量子コンピュータ、VR(仮想現実)など、多岐にわたる先端技術が誕生しています。
しかし、メンバーシップ型雇用に代表される新卒一括採用では専門性を有する人材が育ちにくく、こうした分野でにおいて、より一層、諸外国に遅れをとってしまいます。

そのため、ITやデータ活用など、高度な専門性を有した人材の不足を解消する施策としても、ジョブ型雇用は注目を浴びています。

新型コロナウイルスの感染拡大

新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの企業でリモートワークが導入されています。
それにともない、仕事の進捗状況が不透明になりやすい、マネジメントが困難になるなど、従来型の人事制度や勤務形態、評価制度の形骸化が起きています。

しかし、職務内容や評価基準が明確に定義されているジョブ型雇用は、仕事の進捗状況やマネジメントスキルに左右されることなく評価できるため、リモートワークとの親和性もメリットのひとつに挙げられます。

また、リモートワークやジョブ型雇用といった働き方を導入した場合、組織の状況把握やスムーズな情報の連携を行うためには、ITツールによる情報の一元化が必要になります。営業職では、顧客管理、案件管理、タスク管理などができるCRM/SFAが有用です。

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ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いについて

ここからは「日本型の雇用制度」とも呼ばれるメンバーシップ型雇用の特徴や、ジョブ型雇用との違いについて解説します。

メンバーシップ型雇用の定義

メンバーシップ型雇用は、新卒一括採用や年功序列など、従業員の大半を総合職として雇用し、転職や異動、ジョブローテーションなどを通じて、長期にわたって適性を判断していく雇用制度を指します。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の比較

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の特徴の違いは以下の通りです。

ジョブ型雇用 メンバーシップ型雇用
職務内容 限定的/専門的 総合的
求められる人物像/スキル 高度な専門性を有するスペシャリスト 幅広い職務を担うことが可能なゼネラリスト
転勤の有無 なし あり
報酬 能力や成果に応じて評価 年齢や勤続年数、役割などを総合的に評価
ジョブローテーション なし あり
人材の流動性 高い 低い
教育制度 自己研鑽 会社による研修
採用方法 一般的に中途採用 新卒一括採用
雇用契約 仕事に依存 会社に依存

ジョブ型雇用のメリット

ここからはジョブ型雇用のメリットを、企業側と従業員側の両面から解説します。

企業側のメリット

職務に適した即戦力を採用できる

ジョブ型雇用では、職務記述書に基づいて人材を雇用するため、職務に適した即戦力の人材を採用することができます。
また従業員を一から育てる時間やコストも抑えられるため、生産性向上やリソースの集約化などのメリットもあります。

評価方法や基準が明確

ジョブ型雇用は、あらかじめ役割や職務が明確になっているため、成果や目標に応じて適切な評価をすることが可能です。

従業員側のメリット

専門的なスキルや知識を生かした職務ができ、仕事のミスマッチが発生しにくい

ジョブ型雇用では、従業員の専門的なスキルや知識を活用して職務を遂行するため、仕事のミスマッチを回避することが可能です。
また職務記述書に、仕事内容や勤務地なども明示されているため、入社してから「こんなはずでは…」と理不尽を感じるような齟齬なども回避することができます。

成果や目標が明確

成果や目標、権限などが明確に設定されているため、仕事に対するモチベーションを高く保つことが可能です。
また勤続年数や役職に関係なく、スキルの高さや成果に比例して評価されるため、自身のスキルアップに対するモチベーションがするなど、好循環が生まれやすいという特長があります。

ジョブ型雇用のデメリット

これまでとは違った柔軟な働き方や評価制度がメリットに挙げられる一方、あらかじめ把握しておくべきデメリットも存在します。
以下では、ジョブ型雇用のデメリットについて解説します。

企業側のデメリット

企業の都合で転勤や異動を命じられない

ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブディスクリプション)に職務内容や勤務地が明記されているため、企業の都合で従業員を転勤・異動させることが、原則できません。
そのため、新事業の創出や必要な職務の発生によって人材を適材適所に配置する必要が生じても、人材を流動的に異動させることが困難になります。

採用の難易度が上がる

ジョブ型雇用では、必要な人材の職務を明確に定義するため、相応のスキルや能力を持つ人材を確保できず、安定的な雇用が難しくなる懸念があります。
またジョブ型雇用を採用することで、従来のメンバーシップ型雇用で行われていたジョブローテーションや転勤によるゼネラリストの育成が困難になるため、急な欠員に対処できないリスクも想定されます。

チームワークや組織への帰属意識が醸成されにくい

ジョブ型雇用では職務に対する経験やスキル、専門性が重要視されるため、職務が属人化しがちです。
したがって、職務内容によっては、従来の雇用制度のようには思い入れや帰属意識が醸成できず、従業員の士気やチームワークを低下させる恐れも。

一時的に優秀な人材が確保できても、企業への愛着やチームワークが高められないと、結果としてより良い待遇や条件を求めて他社に転職してしまい、人材の入れ替わりが頻繁に発生するリスクもあります。

従業員側のデメリット

失業リスク

ジョブ型雇用は、経済情勢や景気の動向によっては、自らの職務が役割を失い、失業するリスクが存在します。

現在、欧米企業を中心に、職務ごとに給与が決まるジョブ型雇用は広く普及していますが、その一方で、ジョブディスクリプションに設定された職務がなくなってしまった場合、その職務に就く従業員およびチームは解雇されてしまいます。

メンバーシップ型雇用がベースにある日本では、現時点では解雇規制によって原則解雇することはできませんが、今後ジョブ型雇用が推進されれば、従業員が失業するリスクも想定できます。

新卒採用での雇用の減少

ジョブ型雇用が増えることで、専門スキルを持たない新卒採用など、即戦力にならない人材の雇用の枠が減少する恐れがあります。
ジョブ型雇用の定着で、各企業が職務内容や求める人材を明確に打ち出すことになります。そうなれば、相応のスキルや能力のない人は採用されず、仕事が見つけにくくなる可能性も。

ジョブ型雇用を採用する企業事例3選

ここからは、他社に先駆けてジョブ型雇用を導入した企業の事例を紹介します。

日立製作所

日立製作所(以下、日立)では、本格的なグローバル化の進展を機に、グローバルスタンダードな人事制度やプラットフォームの統一化に着手。

主な取り組みは以下の通りです。

グローバルグレーディング制度

(役割や職責の大きさに応じてポストに値段を付ける)

デジタル人材採用コースの新設

(一律の初任給ではなく個別の処遇設定を採用)

タレントレビュー

(上長などとの個別面談をはじめ、従業員の強み・弱みの把握、育成や職務のアサインを検討。これにより職務と人材のマッチングの促進、キャリア育成と組織力強化を図る)

そのほかにも、リモート環境および在宅勤務の環境整備、1on1ミーティングの導入、キャリアサポートなど、従業員のスキルおよびキャリア支援に取り組んでいます。

富士通

富士通では、ニューノーマル(新常態)を見据えた働き方改革を進めるため、ジョブ型雇用の推進を図っています。

2020年4月より、幹部社員を含む国内の管理職1万5,000人については、グローバルに統一された基準により、職責の大きさや重要性を格付けし報酬に反映。
一般社員についても労働組合との話し合いを経て数年後の導入を目指しています。

また国内企業に先行して2017年4月から富士通社員35,000人を対象にテレワーク勤務制度を採用。
従業員のやる気や能力を公平かつオープンに引き出す人事評価や業績評価を定着化させる取り組みを、随所に行なっています。

資生堂

資生堂では、欧米と日本の専門スキルの差を埋めるための経営「世界で勝てる日本初のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、ジョブ型雇用を推進しています。

主な内容としては、ジョブグレード制度を導入し、ジョブファミリー(領域)を20以上設定。ファミリーごとに職務記述書を明確化。この制度を2020年1月から国内の一部の管理職約1,700人に適用、2021年1月には国内一部の一般社員約3,800人に拡大しています。

このような制度設計をすることで、日本に限らず国外に異動できる人材の確保、および職務ごとに横断的に比較できる制度を目指しています。

ジョブ型雇用の導入は企業価値向上の第一歩!

現在、日本企業の多くは欧米企業と比べ、生産性や利益率、競争優位性など、多くの面で後塵を拝する立場にいます。
そのため、将来的には、これまでのような一貫した人事制度や評価体系を改め、組織に属する多様な人材がよりフレキシブルに働くことのできる環境の整備が強く求められます。

単に成功事例に倣ってジョブ型雇用を導入するのではなく、多様で柔軟な個の能力が引き出せるよう、ジョブ型雇用を目的のひとつして、より良い会社作りを目指しましょう。

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