
マーケティングにおけるCRMを用いたデータ分析 戦略策定まで導くその手法
マーケティングにおける戦略を策定するにはデータ分析は欠かせないもの。
そして、そのためにはCRMを代表としたツールの活用が必須です。
しかし、なぜCRMにデータを入力、蓄積しないといけないのかを理解している人は多くはないのではないでしょうか。
データ分析から戦略や施策に落とすまで、どうやればいいのか、具体的手法まで把握できている人も少数でしょう。
この記事では、マーケティングにおける戦略策定までに必要なスキルである、CRMを用いたデータ分析の概念や、戦略策定に有効な分析手法を解説します。
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なぜマーケティングにおいてCRMでのデータ分析が重要視されるか

ツールは、導入しただけで活用できなければ意味がありません。
そのためには、なぜそれを導入するのかが理解できていなければならないでしょう。
そこで、はじめにCRMを用いてデータ分析をする必要性について触れます。
戦略の策定が可能になる
まず第1の理由は、CRMにリアルタイムで溜まっていく統合データを用いることにより、マーケティング戦略の策定が可能になること。
マーケティング戦略の策定は、以下の2つを軸に考えることができます。
既存顧客に対してのマーケティング
自社顧客の購買行動を基に分析を行うことで、休眠顧客を掘り起こすための戦略の策定が可能になります。
また、成果を出すための成功パターンや課題を発掘することができます。
新規顧客に対してのマーケティング
データから新規顧客のターゲット予測が効くようになります。
プロモーション・マーケティングの立案ができるようになります。
労働生産性が向上する
既存の優良顧客をターゲットにマーケティング施策を実行するほうが、新規顧客獲得にコストをかけるより費用対効果がよいと考えられています。
マーケティングの世界には、「1:5の法則」というものがあります。
この法則は、新規顧客の開拓には既存の顧客からの受注獲得の5倍の人的リソースや金銭コストが必要になる、というものです。
5倍の人的リソースをかけて新規開拓をするのか、あるいは、既存顧客に集中するのか。
ターゲット選定は、費用だけでなく、人的リソースと、人的リソースへの報酬・賃金にも関わってくることです。
労働生産性と、マーケティング施策はリンクしているのです。
一方で、効率のよい既存顧客に集中しすぎるあまり新規の顧客を育てる活動がなくなってしまわないように、リソースを配分するバランスもまた問題になります。
仮に、新規顧客を育てる時間を従来よりも短縮することができれば、リソースの配分も「1:5の法則」のみを基準に考える必要はありません。
マーケティング活動の自由度も上がります。
リソース配分・見込み客を新規顧客に育てるコストなど、CRMに蓄積された顧客データを分析して有効に活用して、可視化・数値化する必要があるのです。
データを統合して初めてマーケティング戦略策定が可能

マーケティング戦略の立案の際、CRMは、社内に散在する顧客データを統合してDBとして活用し、数値を分析、適切な施策を策定することに役立ちます。
そして施策の実施後は、CRMを活用すれば、どの施策がどれだけ貢献しているかが分かるようになります。
また、マーケティング戦略を立てるためには、データの統合だけでなく、分析の統合も必要です。
マーケティング施策の効果は営業の売上データに反映されますし、また、営業のアクションによってもマーケティングに対する反響も変わってくることになるからです。
このように、マーケティングと営業は相互に影響しあって効果を生む以上、分析の統合は欠かせません。
そこで役立つのが「顧客接点」です。
展示会、広告、WEBからの問い合わせなど、企業活動にはさまざまな顧客接点がありますが、マーケティングと営業の活動情報を顧客接点で繋げ統合することで、統合した分析が可能になります。
マーケティングと営業の情報が分断されていると、せっかくコストをかけて獲得した見込み客に対してきちんと営業活動が行われているのかが把握できず、エクセルシートに数字はまとまっているけれども、全く活用されない、などというケースも多くあるのです。
これでは、施策の評価はできません。
受注した顧客はどういった接点で情報を入手し、その後どういった活動を行って受注に至ったかが見える化されれば、営業とマーケティングを統合した分析も簡単に行うことができ、次の施策に活かすことができます。
分析により、営業・マーケティングそれぞれにおいて、結果が出ない原因、結果を出すにはどのような働きかけが顧客に必要なのかが見えてくるでしょう。

下図のように、マーケティングと営業の情報を相互連携させることでフォローの抜け漏れを無くし、見込み客の質を向上させるしくみができあがります。
最近ではMA(マーケティングオートメーションツール)への注目も集まっており、CRMとの連携でさらに高度なマーケティング活動ができるようになります。

CRMで実現できる顧客接点づくりとリレーションのステップ

この5つの要素の内、BtoBにおいては「イベント・展示会」「営業担当者」「コールセンター」が顧客接点となっていましたが、最近では「ソーシャルメディア」「Webサイト」が加わりました。
「ソーシャルメディア」「Webサイト」は、BtoBビジネスにおいても顧客行動を決定づけるコンテンツを持っており、影響力が大きいことが知られており、他の3つの顧客接点と同様に扱われるべきことがわかっています。
これら5つの顧客接点の要素に注力すると、売上に多大な好影響を与えることができます。

上の図のうち、新規顧客開拓に関わるマーケティング活動は「気づく」「関心」「情報検索」の顧客活動に影響します。
顧客の意識を、無関心の状態から関心を持ってもらい、好意に変えていく部分です。
CRMで戦略を策定するために覚えておくべき分析手法

CRMを用いたマーケティング戦略策定に実際に使用するのはこちらの手法です。
1.デシル分析
デシルとは、ラテン語で「10等分」の意味で、この分析手法では、顧客を10のグループに分けます。
通常、売上の大きい順に商品を10のグループに分け、これに対応する顧客を10に分けていきます。
グループごとの総売り上げを算出し、グループごとの売上貢献度を見ます。
さらに、売上総額を上から順に足していき、顧客数がどれくらいで、売上の何%占めるかを計算します。
これにより、売上の何パーセントを何人の顧客で売り上げたのかがわかります。
例えば、50%の売上を20人で上げている場合で、80%の売上を50人で売り上げているとします。
差分に対する30人の施策をどうするか、残り20%の売上に対する施策はどうするかなど、意思決定の役に立てることができます。
売り上げの低い顧客にコストを投入しても利益率は下がってしまうため、そういった効果の低い施策は取るべきでないでしょう。
どういう場面で有効か
利益率の高い顧客層に集中してコスト・人的リソースを割り当てるための意思決定の役に立ちます。
ただしこの分析手法では、1度で大きな売上をあげたがリピートの見込めない顧客に対してもコストを割り当てる結果になるという弊害もあり、単独では使われることのない分析手法です。
2.RFM分析
RFM分析は以下の3つの軸により、顧客を分析します。
- 最新購買日(Recency)
- 購買頻度(Frequency)
- 累計購買金額(Monetary)
3要素でそれぞれに顧客に順位をつけていきます。
順位を点数として3つを足すなどの方法をとり分析すると、直近で購買歴がある、購買頻度と購買金額が高い顧客が優良顧客として認識されます。
順位の数字を足して点数化するため、高順位の優良顧客であればあるほど点数は低くなる逆相関の関係になります。
3つの軸の合計点数の低い方から、コスト・人的リソースを割り当てると、優良顧客のためにマーケティング施策や営業施策を打つことができ、無駄がありません。
どんな場面で有効か
ターゲティングにおいて、優良顧客として注力すべき顧客の選別ができます。
優良顧客へのリソースの集中を図り、そうでない顧客に対しては何もしないことを含めて行動を計画できるので、マーケティング施策の決定に役立ちます。
3.セグメンテーション分析
シンプルかつ使いやすい顧客分析手法に、セグメンテ―ション分析があります。
セグメンテーション分析は、顧客の属性に着目し、セグメント(グループ)ごとの消費行動の予測や市場予測、あるいは導線の設定といった近い将来の行動を予測する目的で利用が可能です。
~歳代の男性には過去にこういう商品が売れたので、同じような商品が売れると推論する、といったシンプルな分析手法ですが、何を浮き彫りにしたいのか、目的さえはっきりしていれば、複数の変数を使って予測と実際の乖離が生じにくくなります。
セグメンテーション分析では、一般的には以下の4つの要素を変数として分析します。
- 地理的変数 ・・・国別・地域別など
- 人口動態的変数 ・・・男・女、年代別など
- 心理的変数 ・・・アンケート設問に「好き」と答えた、趣味が~である、など
- 行動変数 ・・・未婚・既婚・自家用車の保有の有無など
どんな場面で有効か
まず、ターゲットの絞り込みの場面で有効です。
さらに、ターゲットの行動予測の組み合わせによる売上の予測などに有効です。
4.行動トレンド分析
行動トレンド分析は、顧客の行動の傾向=トレンドにより、将来を予測する分析手法です。
3.のセグメンテーション分析の手法と組み合わせて用いられることが多く、セグメントごとの顧客の購買行動や、売れる商品を予測できます。
トレンドは、アパレル・清涼飲料水など、季節商品の売上予測などに活用されますが、顧客分析においても、優良顧客のうちの○○%が購買行動を実際に起こす、といった予測を過去のデータに基づいて行います。
どんな場面で有効か
季節商品の売上予測など、時期に応じた需要の予測に利用されます。
5.CTB分析
CTB分析とは、Category(カテゴリ)、Taste(テイスト)、Brand(ブランド)の3つの指標で顧客を分類する方法です。
顧客がどんな商品を購入するかを高い精度で予測できます。
カテゴリ・テイスト・ブランドの情報をレジのPOSデータと組み合わせ、顧客のプロファイリングを行い、同じ属性の顧客の過去データから需要予測します。
確度の検証がしにくいのが難点ではありますが、分類を小さくすることで確度を上げる工夫をします。
どんな場面で有効か
一言で言うと、顧客の好みから逆算して需要の予測をする際に用います。
スーパーや、小売りなど、顧客の名前や属性はわからない場合の需要予測に用います。
CRMのデータ分析をマーケティングに生かした事例

株式会社相模化学金属様の事例
情報管理をエクセルで行っていたものの、なかなか売れない原因の分析までつかみきれない状態が続き、無駄な作業時間も発生、営業部隊のモチベーションダウンにつながっていました。
そこで、解決策としてeセールスマネージャーを導入、データ統合をCRMで行い、売れない原因をCRMで分析できるようになりました。
営業部門も、入力の手間が省けてモチベーションが上がり、何をすれば売れるようになるのかわかるようになりました。
さらに、他部門にもリアルタイムで分析データが見える化されて伝わります。
顧客の動きも、施策も予想しやすくなったため、受注増につなげることができました
日本粉末薬品株式会社様の事例
営業日報の作成に1時間かかり、情報の一元管理がうまくいかない状況で、CRMによる営業業務のプロセスマネジメントに取り組んだ事例です。
スケジュール管理と日報のツールがバラバラだったのを一本化し、営業日報は少なくとも翌日の朝にはすべてそろうこことなりました。
顧客情報の共有に遅れが生じ、フォローアップの遅れなどがあったのも解消しています。
問いあわせのレスポンスも過去の履歴の検索により最短で30分と迅速化しました。
顧客に関する重要な判断も迅速になり、分析結果を活かした提案営業のスタイルを確立した結果、顧客満足度が上昇しました。
CRMのデータ分析の要点と手法を押さえてマーケティング戦略を導こう

効果的なマーケティング戦略の策定ができるか否かで、営業の成果は大きく異なります。
そのためにデータ分析の手腕は欠かせないスキルの1つです。
分析のためには、複数のデータ統合が必須となりますが、データ統合にはITツールの活用が必須。
御社でもデータ統合と、データ分析に臨む際には、今回の記事を参考にしていただけますと幸いです。
弊社では顧客データの活用などWEBセミナーを開催しているのでぜひご参加ください。
そしてeセールスマネージャーはそれを最大限にアシストするので、ぜひご興味ある方はお問い合わせください。