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オムニチャネルとは?メリットや戦略・各企業の成功事例を解説
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オムニチャネルとは?メリットや戦略・各企業の成功事例を解説

オムニチャネルに取り組む企業は小売業などで増えてきましたが、なぜ普及しているのでしょうか?今回はオムニチャネルの概念やメリット、取り組み事例などについてわかりやすく解説します。

顧客接点を増やして商品販売数を上げたいと考えている方は、この記事を読んでみてください。

オムニチャネルとは 

オムニチャネルとは

まずは、オムニチャネルについてわかりやすく解説します。

オムニチャネルの意味

オムニチャネル(Omnichannel)は、オンラインやオフラインの各チャネルを連携して、一貫した素晴らしい顧客体験を提供することをいいます。アパレル業界を中心に広まっている販売戦略です。オンラインとオフラインのチャネルには以下のようなものがあります。

顧客接点となるチャネルの種類

オンライン ・ECサイト
・企業サイト
・SNS
・ダイレクトメッセージ
・メールマガジン
・広告
オフライン ・店舗
・テレアポ
・訪問営業

チャネルを連携すれば、ECサイト上で気になった商品の在庫が店舗にあるか確認できて、当日に商品が購入できるようになります。快適な買い物体験を提供できるようになれば、顧客満足度が上がりリピーターになってもらいやすくなります。売上を伸ばしていけるため、販売戦略としてオムニチャネルが注目を浴びています。

オムニチャネルが注目された理由

オムニチャネルが注目された理由は、スマートフォンが普及してSNSやアプリなど顧客接点が多様化したためです。従来は店舗かECサイトかを決めて、特定のチャネルで商品を販売するシングルチャネルが一般的でした。

しかし、近年はユーザーが好みの商品購入方法を選べるオムニチャネルが主流となってきています。店舗やECサイト、SNSなどマルチチャネルを統合して、一貫性のある顧客体験を提供する企業が増えてきたことから、オムニチャネルが注目され始めました。

オムニチャネルの市場規模

オムニチャネルとは?メリットや戦略・各企業の成功事例を解説_オムニチャネルコマースの市場規模

出典:ITナビゲーター2021年版

オムニチャネルで優れた顧客体験を提供する企業が増えています。野村総合研究所の市場調査レポート『ITナビゲーター2021年版』によると、2021年のオムニチャネルコマースの市場規模は61兆円。2026年にはオムニチャネルコマースの市場規模は80兆9,000億円に拡大すると予想されています。市場調査レポートから、オムニチャネルで一貫した顧客体験を提供する企業が増えてきていることが分かります。 

マルチチャネル、クロスチャネル、O2Oとの違い

オムニチャネル推進のためには知識が必要です。そのため、間違われやすいマーケティング用語「マルチチャネル」「クロスチャネル」「O2O」との違いを理解しておきましょう。

オムニチャネルとマルチチャネルの違い

オムニチャネルとマルチチャネルの違いは「戦略」です。

マルチチャネルはWebサイトやSNS、メールなどのチャネルを活用して顧客とコミュニケーションをとるマーケティング戦略です。各チャネルは独立しているため、一貫性のある顧客体験は提供できません。

一方、オムニチャネルはマルチチャネルのデータを統合して、一貫性のある顧客体験を提供するマーケティング戦略です。各チャネルが連携しているため、一貫性のある顧客体験ができます。

 オムニチャネルとクロスチャネルの違い

オムニチャネルとクロスチャネルの違いは「連携の仕方」です。

クロスチャネルは、チャネルのデータを連携しています。データを連携することで、ECサイト上で店舗に在庫があるか確認できたり、店舗にない商品がECサイトにあるかを確認できたりしますが、チャネルを横断した買い物はできません。

オムニチャネルは、チャネルを連携しています。チャネルを連携することで、店舗の商品コードを読み込んでECサイトで購入したり、ECサイトで予約をして店舗で受け取るなどチャネルを横断した買い物ができます。

オムニチャネルとO2Oの違い

オムニチャネルとO2Oの違いは「マーケティングの視点」です。O2Oはチャネルを連携してオンラインからオフラインへ、オフラインからオンラインへ顧客を誘導するマーケティング戦略をいいます。一方、オムニチャネルはチャネルを連携して、顧客が快適に感じられる顧客体験を提供するマーケティング戦略をいいます。

オムニチャネルのメリット

オムニチャネルのメリットは3つあります。 

 顧客満足度を上げられる

オムニチャネルを推進すれば、優れた顧客体験が提供できます。

たとえば、ECサイト上で在庫情報を確認できれば「店舗に在庫がなくて商品が購入できなかった」のような機会損失を防げます。

顧客の商品購入履歴を一元管理しておけば、ECサイトで商品を購入してくれている顧客が初めて実店舗を訪れた際に「いつも商品を購入してくださって誠にありがとうございます」と、お礼が伝えられるでしょう。顧客は快適な顧客体験が受けられるため、顧客満足度を上げられアップセルが狙えます。 

アップセルについて詳しく知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。

参考:アップセルとは?顧客単価を引き上げる成功・失敗事例を徹底解説!

 機会損失を削減できる

オムニチャネルを推進して、オンラインでもオフラインでもショッピングできる状態にしておけば機会損失を減らせます。

ECサイトの普及により、店舗で商品を実際に見てからECサイトで購入する、という人が増えました。ECサイトで購入すれば手荷物になるのを避けられるため、店舗では商品を販売せずにショールームの役割を持たせるところも増えてきました。

顧客の行動は多様化してきているため、機会損失を防ぐためにもオムニチャネル化しておきましょう。 

 顧客データを統合的に分析できる

オムニチャネルは、各チャネルのデータを一元管理して分析ができます。

たとえば、顧客データでは「商品購入日」「商品購入頻度」「累計購入額」が把握できて、優待プレゼントを送ることも可能です。

顧客行動データを解析すれば、どのように店舗・ECサイトを運営していけばいいか、戦略を練り直すこともできます。このように経営戦略やマーケティング戦略を見直せることもメリットです。 

 オムニチャネルのデメリット

オムニチャネルのデメリットも3つあります。

 店舗とECサイトが競合になる

オムニチャネルでは、店舗とECサイトが競合になってしまいがちです。店舗では商品を確認して、ECサイトで注文するという流れになると店舗の売上が落ちてしまいます。

店舗の売上が落ちると、運営スタッフのモチベーションが下がったり、出店コストを無駄に感じたりしてしまうでしょう。このような事態を防ぐために、店舗限定の特典を付けて集客するなどの施策を考える必要があります。

 導入コストがかかる

各チャネルを使用するための費用や、各チャネルのデータを管理するデータベース費用などのコストがかかります。また、顧客接点となるチャネルを増やすと運営スタッフを採用しなければいけません。運営スタッフの教育もしなければいけないでしょう。

このように、オムニチャネルを実現するためにはコストと労力がかかります。 

 効果が出るまで時間がかかる

オムニチャネルを実現しても、ユーザーに快適な買い物ができると認知されるまでには時間がかかります。そのため、オムニチャネルを周知していかなければいけません。

たとえば、店舗では「手荷物になる場合はECサイトで商品を購入してください」と呼びかけたり、ECサイト上では「店舗で商品を購入すれば、サンプルをプレゼント」と呼びかけたりして、快適な買い物が楽しめることを周知する必要があります。

オムニチャネルは即効性のある戦略ではないため、長期的な視野を持ち取り組むようにしましょう。

 オムニチャネル導入の流れ

オムニチャネル導入の流れは、以下の4STEPです。 

1.ロードマップを作成する

ロードマップとは、オムニチャネル導入のために「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように行動するか」をまとめたものです。

ロードマップを作成しておけば、具体的な手順がわかるようになり、計画的に導入を進めていくことができます。オムニチャネルは規模が大きく煩雑になりがちなので、かならずロードマップを作成しておきましょう。

また、オムニチャネル導入に向けて一致団結できるように「主力チャネルはどれか」「オムニチャネルでどのような効果を見込みたいか」「どのような状態で成功とするか?」を一緒に決めておきましょう。 

2.カスタマージャーニーマップを作成する

オムニチャネル導入のために、顧客の購買プロセス「認知」「訴求」「調査」「行動」「推奨」の段階で、どのようなチャネルを使うかカスタマージャーニーマップにまとめていきます。 

参考例:

  行動&要求 タッチポイント
認知 ・キャンプを予定しており、車中泊に特化した寝具があることを知り、興味を持っている
・利用者のリアルな感想(クチコミ)を知りたい
・Webメディア
・ブログ
・SNS
訴求 ・車中泊の寝具の価格の相場を知りたい ・Webメディア
・ECサイト
調査 ・車中泊の寝具を比較・検討したい
・価格と性能のバランスがよく満足できるものを探したい
・ECサイト
・店舗
行動 ・車中泊の寝具を購入したい ・ECサイト
・店舗
推奨 ・車中泊の寝具を友人にも薦めたい ・SNS

3.社内体制の整備をする

企業では「営業部門」「マーケティング部門」「店舗部門」「ECサイト部門」など役割が分かれている組織形態であることが多いです。

各チャネルの対応がバラバラだと、快適な顧客体験は提供できません。そのため、オムニチャネルを実現するために共通の認識を持たせましょう。

また、オムニチャネルを実現すると店舗の売上が落ちてしまうことがあります。このような事態を見据えて、人事評価制度も見直しておくと、前向きに取り組んでもらえるようになります。

4.オムニチャネル関連ツールを導入する

最後に、オムニチャネル関連ツールを導入します。オムニチャネルツールを導入するときは、機能性と操作性を重視しましょう。一般的には、以下のような機能が搭載されています。

  • EC出品機能
  • 在庫管理機能
  • ポイント管理機能
  • POS連動
  • 在庫連動
  • SNS連携
  • NFC連携
  • メール配信
  • クーポン配布
  • キャンペーン配布 

また、オムニチャネルツールとCRMを連携させておくことで顧客データを一元管理できます。

CRMについて知りたい方は、下記の記事を読んでみてください。

参考:CRMとは?機能やメリット、導入時の選び方、活用のコツをわかりやすく解説

オムニチャネル推進を成功に導く3つのポイント

オムニチャネル推進を成功に導くためのポイントは3つあります。 

各チャネルを統合する

オムニチャネルの各チャネルを統合して、「顧客情報」「商品購入情報」「在庫情報」などを一元管理しましょう。たとえば、どのチャネルからアクセスしても、商品の在庫状況が同じであれば、顧客は在庫があるかどうか探す手間が省けます。

顧客情報や商品購入情報を管理しておけば、ECサイトで買い物した経験のある顧客に「ECサイトでも商品を購入してくださってありがとうございます」と伝えるなど、ホスピタリティの感じられるコミュニケーションが取れるようになります。 

全社で認識を統一しておく

オムニチャネル推進を成功に導くためには、共通の認識を持つことが大切です。オムニチャネル推進する際に「なぜ取り組む必要があるのか?」「どのような状態なら成功と言えるのか?」などを共有しておき、役割分担を明確にしておきましょう。組織全体の意識改革をするつもりで取り組むことが大切です。 

PDCAサイクルを回す

オムニチャネル推進で成果を出すために、チャネルを通して取得したデータを分析して、業務改善していきましょう。データを元に、より顧客に満足してもらえる接客や販売フローに変えることで、顧客満足度やリピーター率が上がり、売上アップが期待できます。

 オムニチャネル戦略に取り組む企業事例

オムニチャネルに取り組んでいる企業は、どのような効果が見込めているのでしょうか?ここでは、オムニチャネル戦略に取り組む企業事例をご紹介します。

株式会社VHリテールサービス

オムニチャネルとは?メリットや戦略・各企業の成功事例を解説_メガネスーパー

株式会社VHリテールサービスは、メガネやコンタクトレンズを販売している全国チェーン店「メガネスーパー」を経営している会社です。2015年7月に上場廃止目前まで業績が低迷しましたが、オムニチャネル戦略で顧客満足度を上げ、黒字転換しました。

ECサイトで注文した商品を店頭受取できるようにしたり、店舗の在庫状況を調べられるようにしたり、快適なショッピングを実現。

また、顧客情報・購入履歴を一元管理することで、どのようなメガネを探しているのか、求めているのは眼鏡なのかコンタクトなのか、などを一から尋ねずとも商品を案内できるようになりました。また、コンタクトが使い終わりそうな顧客にDMを送るなど、きめ細かな接客で業績を回復できました。

株式会社ワークマン

オムニチャネルとは?メリットや戦略・各企業の成功事例を解説_ワークマン

株式会社ワークマンは、作業服・作業用品を販売する小売店「ワークマン」を経営している会社です。2020年3月から店舗在庫のお知らせや、ECサイトの商品の店頭受け取りなどのオムニチャネルに対応したECサイトをオープンしました。

同社が店舗受け取り通販を開始した理由は、全体の売上5割を占めるプライベートブランド商品のラインナップ強化をするためです。店舗受け取りにすることで、顧客は即日商品が受け取れるだけでなく、企業側は宅配コストを削減できます。削減できた宅配コストを、商品やサービスに還元することで、ファンの獲得に成功しています。 

株式会社マルイ

オムニチャネルとは?メリットや戦略・各企業の成功事例を解説_マルイ

株式会社マルイは商業施設「マルイ」を経営している会社です。株式会社マルイはプライベートブランドを軸にしたオムニチャネル戦略で成果を上げています。

オンラインとオフラインを融合してショッピングが楽しめるようにするだけでなく、試着専用の、商品を売らない店を出店しました。商品を売らない店舗では、好きな商品を自由に試着できると評判です。また、近年ではKDDIと協業で仮想空間モール「Wowma!」に出店するなど、オムニチャネルを推進しています。

同社は、最初の頃は店頭で集客をして、ECサイトの利用があるかを訪ね、利用経験がない人にはクーポンを渡してECサイトの新規会員になってもらうように促していました。そして、早期に店舗とECサイトの在庫情報を連携。

ECサイトで商品が欠品している場合は、店頭から配送するという仕組みを整えており、1日1,000件が店頭在庫の商品となっています。このように、オムニチャネル推進を加速させて、集客に成功しています。

 オムニチャネルで顧客満足度を上げ売上アップを目指す

オムニチャネル(Omnichannel)は、オンラインやオフラインのチャネルを連携して、一貫した顧客体験を提供することをいいます。快適な買い物体験を提供できるようになれば、顧客満足度が上がり、リピーターになってもらえて、売上を伸ばしていくことができます。

この記事では、オムニチャネル導入の手順や成果を出すコツまで解説しました。ぜひ、この記事を見ながら、オムニチャネルで顧客満足度を上げ売上アップを目指してみてください。

参考:【第11回】急速な環境変化に対応するための営業戦略とデータ活用

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