マトリックスとは?意味やビジネスにおける活用事例・フレームワークを紹介
ビジネスシーンにおける「マトリックス」とは、情報を分類するための「マトリックス図」や、組織形態としての「マトリックス組織」の意味で使用されることの多い用語です。
本記事では、戦略立案のベースとして活用されるマトリックスの概要やメリット、代表的なフレームワークを紹介しています。マトリックスを活用した企業の成功事例も紹介するため、自社のビジネスをより戦略的に進めたい方はぜひ参考にしてください。
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マトリックスとは?
マトリックスとは、本来「母体・基盤」という意味で、数学の行列のことを指す言葉です。ビジネスにおいては「マトリクス」と表現されることもあります。
一般的に、マーケティングにおいては「マトリックス図」として用いられ、2つ(または3つ)の軸で情報を分類する手法を指します。
マトリックス図は情報の相関関係やポジショニングを明確化することに役立つため、さまざまなフレームワークのベースとして活用されています。
マトリックスのスタイルは、大きく分けて「テーブル型」と「ポジショニングマップ型」の2種類があり、情報を2×2の4つに分けて整理することが一般的です。それぞれの型の特徴を以下で解説します。
スタイル1. テーブル型
テーブル型は「重要度の高低」「メリット・デメリット」など、定性的な(数値化が難しい)情報を整理するときに役立つスタイルです。
たとえば仕事やタスクの優先順位付けを行う際は、上図のように重要度を縦軸、緊急度を横軸に取ることでやるべきことをわかりやすく整理できます。
縦横の軸を自由に設定することで、オリジナルのマトリックス図を作成することも可能です。
テーブル型のマトリックスにおいて、各象限のなかでの優先順位はつけません。各情報の「程度」を細かく表したい場合には、以下で解説するポジショニングマップ型を活用します。
スタイル2. ポジショニングマップ型
ポジショニングマップ型は「どれくらい高いのか」「どれくらい大きいのか」のように、程度の相対的な立ち位置を示すときに役立ちます。
そのため、競合他社との差別化ポイントを探ったり、市場における立ち位置を把握したりする際などに使用されることが多いスタイルです。
テーブル型ほど情報の区分けを明確化しなくてもよいため、より直感的に情報を整理できます。
マトリックスをビジネスで活用するメリット
マトリックスはビジネスのあらゆる場面で活用可能ですが、具体的にどのようなメリットがあるのかをあらためて整理しましょう。
戦略や方向性を共有しやすくなる
マトリックス図を用いて情報を整理することで、物事の全体像が可視化されます。そのため、自分自身の思考整理に役立つことはもちろん、部下やチームメンバーへの意思疎通も容易になるでしょう。
状況がひと目で判断できるため、会議やプレゼンにおいて相手を説得したいときにも有効です。情報を視覚的に伝えることで、ビジネスの戦略や方向性を組織内外に共有しやすくなります。
リソースを的確に分配できる
マトリックス図を活用すると「どの業務に」「どれくらいの人員を」割くべきかが明確化されます。
上図を一例として考えてみましょう。
マトリックス図を用いて情報を整理していれば「募集要項の作成」や「FAQの整理」に緊急性がないことがわかります。この場合は、緊急かつ重要度の高い2つの業務へのリソース分配を適時に判断でき、業務を効率的にすすめることができます。
マトリックスを用いた思考で業務にあたることで、組織全体の生産性・売上向上につなげることができます。
マトリックスを活用したフレームワーク5選
マトリックスは、さまざまなビジネス思考のベースとして活用されています。以下ではマトリックスを用いた代表的なフレームワークを5つ紹介します。
参考:事業戦略の策定に役立つフレームワーク10選|成功に導くポイントも解説
TOWSマトリックス
TOWSマトリックスは、SWOT分析をベースとして事業戦略を策定するためのフレームワークです。SWOTに関連したツールのため「クロスSWOT分析」と呼ばれることもあります。
SWOT分析で抽出した外部環境(機会・脅威)、内部環境(強み・弱み)をかけ合わせ、より具体的な戦略を生み出す際に活用可能です。
アンゾフマトリックス
経営学者のH.I.アンゾフが提唱したアンゾフマトリックスは、企業の成長戦略を生み出す有名なフレームワークのひとつです。
縦軸に「市場」、横軸に「製品」を取り、それぞれ「既存」「新規」の2区分を設けて情報を整理します。自社が成長するためにはどのような戦略で事業を行うべきか、アイディアを数多く抽出したい際に役立つフレームワークです。
アドバンテージマトリックス
アドバンテージマトリックスは、競合環境を分析して事業戦略を打ち出すフレームワークです。1981年に「ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)」が提唱しました。
「競争要因」と「優位性の構築」の2軸で事業を4つのタイプに分け、業界の特性を把握することで競争激化に対抗する戦略を立案できます。
BCGマトリックス
BCGマトリックスは、1970年代にBCGが発案したフレームワークです。PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)や、成長率・市場占有率マトリックスとも呼ばれます。
「相対的な市場シェア」と「業界の成長率」を使用してプロダクトの可能性を評価するため、自社のどのプロダクトが稼ぎ頭で、どのプロダクトが行き詰まっているかがひと目でわかります。
GEビジネススクリーン
GEビジネススクリーンは、BCGマトリックスをより複雑・高度にしたフレームワークです。ゼネラル・エレクトリック社(GE)とマッキンゼー社によって提唱されました。
「業界の魅力度」と「業界の地位」を使用し、事業のタイプを9種類に分類します。自社のリソースをどの事業に分配するべきか検討するのに役立つため、事業部の多い企業で活用されることが多いフレームワークです。
マトリックスでビジネスを成功に導いた事例
マトリックスを活用したフレームワークを紹介しましたが、「実際の企業ではどのように活用しているのだろう」と気になる方も多いのではないでしょうか。
以下では、マトリックスを用いてビジネスを成功に導いた事例を2つ紹介します。
Apple|スティーブ・ジョブズによる2×2マトリックスの活用
Apple社の創設者、スティーブ・ジョブズがマトリックス法を活用して製品ラインナップを整理したことはよく知られています。
経営不振に陥っていた当時のAppleは、マックだけでも10種類以上のラインナップがあり、製品ラインが煩雑化していました。
ジョブズはマトリックス法を用い、この製品ラインを整理。その当時の状況はウォルター・アイザックソンの著書『スティーブ・ジョブズ』(2011年、講談社)によって以下のように記されています。
マーカーを手にするとホワイトボードのところへゆき、大きく「田」の字を描く。
「我々が必要とするのはこれだけだ」
そういいながら、升目の上には「消費者」「プロ」、左側には「デスクトップ」「ポータブル」と書き込む。
各分野ごとに1つずつ、合計4種類のすごい製品を作れ、それが君たちの仕事だとジョブズは宣言した。
ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズⅡ』(2011年、講談社)
このマトリックスにより、製品ラインナップはシンプルかつわかりやすく整理され、Apple社の業績は急回復しました。
富士フイルム|アンゾフマトリックスの活用で業績アップを実現
富士フイルムは、写真フィルムの需要が急減するなか、危機をいち早く察知して多角的な成長戦略を策定しました。その際、下図のようにアンゾフマトリックスを活用しています。
既存市場×既存製品の「市場浸透戦略」においては、インスタントカメラ「チェキ」の再ブレイクが挙げられます。SNSやインフルエンサーを駆使したマーケティング戦略により、市場トレンドに逆行した人気獲得に成功しました。
そのほか、医療業界への技術提供や化粧品業界への進出など、さまざまな成長戦略を実行することで、主力製品が衰退するなかでの業績アップを実現しています。
参考:リクルートワークス研究所『10万台から1000万台へ インスタントカメラはなぜ共感を呼んだのか』
マトリックスを活用し有効な事業戦略を立案しよう
マトリックスは、ビジネスのさまざまなシーンで思考をクリアにするための武器として活用できます。組織の問題解決や、企業の方向性を決定づける戦略立案の際は、本記事で紹介したフレームワークや成功事例をぜひ参考にしてください。
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