【保存版】ERPとは?導入企業がメリットや導入効果、目的を解説
「ERPは経営に必須」「中小を含めて成功企業は長年ERPを使っている」などと、ERPについて耳にする機会が増えてきました。しかし、ERPとはそもそも何ができて、どんなメリットがあるものかピンとこない場合も多いでしょう。
そこで今回、ERPを含めてさまざまなツールを7,000社以上に導入してきた弊社が、ERPとは何で導入するとどんなメリットがあるかなどを解説していきます。
ERP導入可否の判断ができ、先行きが不明瞭な時代に自社を存続させていくきっかけになるので、ぜひじっくりとお読みください。
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ERPとは?導入すると何がどうなるか解説
簡単に説明すれば、ERPとは自社の経営資源をリアルタイムで見える化し、最適な経営をできるようにしようというITツールです。ITが発展する前は、自社のヒト・モノ・カネ・情報を正確に把握したうえで、最適な経営をしていこうという計画のことでした。
そもそも ERP (Enterprise Resource Planning) という言葉の意味を日本語に直訳すると「企業資源計画」となります。 そして、現在はITの発展でツール化されたものが、ERPと一般に認識されているというわけです。
なお、いわゆる基幹システムとERPはまったく違います。基幹システムが基本的に業務や部署ごとにシステムが分かれているのに対し、ERPは一元管理が可能です。つまり、ERPは知りたい経営情報の抽出をさまざまな部署に依頼せずにすんだり、タイムラグがなかったりするわけです。
ERPを導入して得られる代表的な効果やメリットをまとめると、以下のとおりです。
- 自社の経営状態を知りたいときに正確に知れる
- ムリ・ムダ・ムラが減り生産性が上がる
- 粉飾決算や横領を防げる
正確で速い経営状態の把握によって、正しい次の戦略をたてたり、無駄や不正を防げるというわけです。ERPの導入効果やメリットは、ERPを導入可否を決める直接の理由になるので、より詳しく解説していきましょう。
ERPのメリット6つ
ERPの詳細なメリットを解説していきます。具体的には以下の6つです。
- データの一元管理で管理の手間が減る
- コストを削減できる
- 業務効率がアップする
- リアルタイムに正確な経営状態を知れる
- 「ベストプラクティス」を取り入れられる
- 内部統制監視の負担を軽減できる
各メリットを理解し、自社にERPが必要かどうかを判断していきましょう。
データの一元管理で管理の手間が減る
ERPでは財務会計管理や販売管理などの各モジュールから生成されるデータが、直ちに整理されて一つに集約されるため、部門間に跨がる経営情報の可視化が実現します。
各部署で特有のシステムを使っていたり、Excelでまとめ上げたりしているなら、労力をかなり減らせるでしょう。
コストを削減できる
ERPはコストの削減にもつながります。というのも、各部署で導入しているシステムを一本化したり、次に紹介する生産性アップのメリットから無駄な業務を減らしたりできるからです。
特に、昔導入した基幹システムなどをアップデートして使っているなら、ERPによるコスト削減効果は大きいでしょう。古いシステムの保守費が高騰をおこす いわゆる「2025年の崖」問題のレガシーシステム(アップデートを繰り返して複雑化したシステム)に当たります。また、いちいちデータ抽出作業が仕事の大半になっている従業員により付加価値の高い仕事を任せられるようにもできます。
要するに、何かと話題になることの多いDXの観点からもERPは導入を検討すべきなのです。なおDXについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
業務効率がアップする
基幹システムは、部門ごとにデータを管理しており、各部署で属人的な業務が発生しがちです。
一方でERPなら、たとえば販売管理データが入力されたら、同時にそれが在庫管理データにも反映されるため、常にリアルタイムの在庫状況を確認できます。そして営業担当は在庫管理担当の手を煩わせることなく、PCのブラウザ上で自ら在庫確認が行えるので、顧客への回答が迅速に行え、業務効率が上がるのです。
リアルタイムに正確な経営状態を知れる
ERPから生成されるデータは集約されるので、誰でも必要な時にリアルタイムな情報を確認できます。経営者はデータ分析をわざわざ従業員に依頼することもせず、自らが抽出したデータで、経営判断が迅速に行えるのです。
「ベストプラクティス」を取り入れられる
ERPには、成功企業で蓄積したノウハウであるベストプラクティスというものがあります。詳しくは後述する「ERPの機能紹介と他システムとの違い」で紹介しますが、ERPの機能は各企業で独自性を出すべき業務(営業や商品開発など)を支援するものではありません。
そして多くの場合、バックオフィス系の業務には改善の余地があります。地道に改善するのではなく、ERPで成功企業が実証済みのノウハウが手に入れば、大きな生産性向上を目指せます。
内部統制監視の負担を軽減
ERPを導入すると、自社内の違法行為防止のためにしている内部統制監視の負担を減らせます。
2002年に起きたエンロン事件後、コーポレートガバナンスを企業に順守させるためのSOX法がアメリカで制定されたことに続き、日本でも2006年に日本版SOX法(J-SOX法)が誕生しました。
ERPの管理機能では一般的に、ワークフローやアクセス権限管理といったデータの正確性や業務の確実性やシステムの安全性を確保する機能が備わっているため、企業が被る内部統制の運用負担を、ERPにより軽減することができます。
ERPの機能紹介と他システムとの違い
メリットを生み出しているERPの機能を具体的に紹介していきます。また、機能を見ることで、後々発生しがちな他ツールとの混同を避けるために、他ツールとの違いも簡単に紹介していきます。
ERPの機能一覧
ERPの主な機能は以下のとおりです。
- 会計管理(一般会計、買掛金管理、売掛金管理、財務管理)
- 管理会計(間接費管理、製品製造原価会計、収益性分析・管理)
- 固定資産管理
- 販売管理(受注管理、出荷管理、請求書発行)
- 在庫購買管理
- 生産管理・計画
- 品質管理
- プラント保全(プラント保全、文書管理、サービス管理)
- 人事管理(人事管理、人材開発、給与管理など)
- プロジェクト管理
- ワークフロー(ビジネスプロセスの自動化)
- 業界別ソリューション(銀行、自動車など業界別テンプレート)
上記機能をみると、もしかすると後でBIツールやCRMなどとERPの違いがわからず混乱するかもしれません。実際、ERPの機能の一部にBIが入っていたり、CRMと連携させて相乗効果を得たりする場合は多いです。そこで、BIやCRMとCRPとの違いを簡単に解説していきます。
混同されがちなERPとBI、CRMの違いとは?
混同される場合もあるERPとBI・CRMの違いを解説していきます。
BIはデータを組み合わせて出力、分析できるツール
BIツールは、企業に蓄積されているデータを集約して可視化するのに長けたツールです。要するに、集めたデータを分析したり加工したりするのに向いています。
相性の良さからERPの機能として組み込まれたり、連携したりされるケースが多いです。より詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてみてください。
CRMは売上を生み出すツール
CRMとは顧客データの管理に特化して、営業パーソンを支援したり、見込み客を効率的に育てるツールです。売上を最大化するためのツールといえます。
たとえば、ERPの販売管理機能は、受注額等の案件情報を管理しますが、情報を通して売上などの数字を管理するものです。一方でCRMは顧客情報や営業履歴を見ることに特化しているので、管理部ではなく営業部向けのツールになります。
そして、ERPとCRMを連携できる製品もあり、CRM単独よりも顧客情報を活用しやすくなります。ERPで管理部の生産性とコストカットをしつつ、CRMを強化して売上最大化も目指せるわけです。CRMについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
ERP導入に向けての重要ポイント
ERPを導入するだけで、全てがうまくいくわけではありません。ERP導入時の重要なポイントを紹介していくので、自社でうまくいきそうかを判断して見てください。
重要になるのは導入目的の明確化と導入候補製品の十分な比較です。それぞれの詳細を解説していきます。
導入目的の明確化
ERP導入以前の様々な課題から、導入目的を明確化します。注意したいのは、導入すること自体が目的にならないことです。先に紹介したERPのメリットを使って、自社をどうしたいのかを明確化すると良いでしょう。
導入候補製品の十分な比較
基本となる機能やモジュールはどのERPもあまり変わりがありませんが、各社差別化をはかっているなので、それぞれ個性があります。自社のニーズによりあった製品を選ぶため、複数のERPで比較することが大切です。
代表的なERPを4つの分類ごとに紹介
企業規模や企業が注力したい機能により、選択すべき製品は異なります。そこで、代表的なERPを以下4つに分類しました。
- 海外製品、大企業向け
- 海外製品、中堅中小企業向け
- 業種特化型の海外製品
- 国産ERP
海外と国産に分けているのは、過去に海外製品が日本の商習慣にあっておらず、まともに使いにくい時期があったためです。今は、日本市場に修正されたものがありますが、やはり国産と比べると海外よりな仕上がりといえます。少なくとも日本で導入数の多い海外製品を選ぶべきなので、厳選したものを紹介していきます。
海外製品、大企業向け
海外製品で大手企業に導入されているものとしては、以下が代表的です。
- SAP S/4 HANA (SAP):自社インメモリーデータプラットフォームのSAP Hanaでの高速データ処理、グローバル企業に向く
- Oracle EBS (Oracle): SCMもサポート、グローバル経営むき
上記は有名なERPですが、実はグローバル化している企業向けです。価格もそれなりにするので、自社の状況と合わせて導入を検討してください。
海外製品、中堅中小企業向け
海外ERPのうち、中小企業向けといえるの配下の3製品です。
- Netsuite ERP (Oracle) : クラウドERP No.1。CRM、BI機能を標準装備
- Microsoft Dynamics 365 Business Central (Microsoft):マイクロソフト製品と連携
- SAP Business by Design (SAP): 36種のビジネスシナリオがプリセット
機能と価格のバランスが良い傾向にありますが、日本市場が最優先というわけではないので、国産の使い勝手と比較はしたほうが良いでしょう。
業種特化型の海外製品
海外ERPには、業種に特化したものもあります。
- IFS Applications (IFS):生産管理系機能に強み
- Infor ERP (Infor): 製造と流通管理に特化
上記の機能のみが欲しいなら導入を検討してみるとよいでしょう。ただし、ERP本来のメリットは、多部署のデータを一元化できることなのは忘れないでください。
国産ERP
日本の商習慣にピッタリなのが国産ERPです。
- Grandit (グランディット): EDIなども統合したWeb-ERP、日本の企業に最適
- Kintone(サイボウズ):必要なアプリケーションを簡単に作成できる
- ZAC(オロ):プロジェクト特化型で広告、制作、受託請負業に向く
今のところGranditに一日の長があります。また、Granditは同じく国産のCRMやSFAなどと連携して、利益の最大化やさらなる生産性の向上も目指せるのがポイントです。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
ERPは段階的に日本向けに最適化されたてきた歴史あり
ERPの製品紹介で、かつては日本の商習慣にあっていなかったと軽く紹介したので、ERPの歴史を簡単に補足しておきます。現在は、先に紹介した製品を中心に極めて有用になっているという前提でお読みください。
まず、ERPは1960年代後半から1980年代までに、様々な業務システムが世界中で開発されました。ERPがブレークするきっかけとなったのは、欧米を中心としたBPR (Business Process Reengineering=業務改革)ブーム。BPRが、部門最適型のシステムから脱却する機会を多くの企業に与えたのです。
SAP R/2はアメリカから
IBMドイツ法人を退社した技術者5名が1972年に創業した独SAPが、翌1973年に初の自社製品となったR/1(会計システム)のリリース。その後、発表されたメインフレーム上で動くERPのR/2がアメリカでブレークしました。
1992年にクライアントサーバー型ERPのR/3がリリースされる頃には、SAPは欧米でビックネームのブランドに成長していました。
ほどなくしてSAPは独本社に日本プロジェクト室を設置し、日本人のエンジニアを採用します。R/2の一部に日本語を被せて、日本企業数社の協力によるテストを行った後、R/3の全面的な日本語化に着手したのです。
通算で10年程のテストフェーズを経て、R/3発表の同年である1992年に日本法人のSAPジャパンが設立、1994年6月のR/3初の日本語版であるバージョン2.1Dがリリースされましたが、ドイツ製品でヘルプ文書は英語も不完全。当初は「動かないシステム」と何度もメディアに叩かれました。
しかし、アップデートを重ねる内に、会計システムを中心にERPの導入が1995年以降日本でも急速に進みました。日本製ERPの種類も次第に増え、ERP市場が成長したのです。
ERPのトレンド2つ
ERP市場は加熱しており、トレンドもあります。実際、2019年11月に矢野経済研究所が行った調査によれば、今後3年間でIT投資が増加するソフトウェア予想で、ERPが首位になりました。
ERPが1位になった背景として、以下2つのトレンドがあります。
- クラウドERPの躍進
- サブスクリプションの登場
クラウドERPの躍進
最初は自社サーバーにERPアプリケーションをインストールする、オンプレミス方式の導入手法しかありませんでした。カスタマイズ性が高く、セキュアであるメリットはありますが、初期費用と毎年かかる保守費用が高額です。
その後、クラウドERPが登場。導入が迅速でリーズナブルな料金体系になりました。最近はクラウドERPが標準になりつつあり、中小企業もクラウドERPのおかげで変化が起こっています。
なお、以前は安定性の問題があったので、中堅規模以上のユーザー数を有する企業には向かないとされたクラウドERPですが、技術の進歩で大企業でもサポート可能です。
サブスクリプションの登場
クラウドERPでは多くの場合、サブスクリプション(継続課金型)方式を採用されています。企業規模に比例してランニングコストは増加しますが、オンプレミス方式よりイニシャルコストがおさえられます。かつてERPは大企業向けと考えられていましたが、今は中小企業でも問題なく導入しやすくなっているのです。
まとめ:ERPで自社の存続と成長を!
今回はERPの概要や導入効果、トレンドなどを紹介しました。
日本でも未来が不透明・不確実で、次の経営戦略が立てにくくなっています。しかし、変化が激しい状況で経営戦略を修正しないのは危険で、あいまいに自社の状況を把握してなんとなく戦略を決めるのはさらに危険です。
せひ、自社の存続と成長をはたす材料としてERPを検討してみましょう。また、ERPとの相乗効果のあるCRMなども合わせて検討して、さらなる利益や生産性の向上を目指すのもおすすめです。