PBX(電話交換機)とは?仕組みや機能を図解でわかりやすく解説
PBXとは、企業内の内線同士を接続したり、発着信を制御したりする機能を持つ電話交換機のことです。従来のビジネスフォンとは異なり、遠隔地にある拠点の電話機を内線で接続できたり何千台もつないだりでき、社内の電話環境整備に大きく役立ちます。
ここでは、PBXの具体的な機能や種類と特徴、導入のメリット・デメリットなどについて解説します。導入事例も紹介しているため、検討時の参考にしてください。
PBX(電話交換機)とは
PBXとはPrivate Branch Exchangeの略称で、複数の電話回線をつなぐ「電話交換機」のことを指します。拠点内にある電話機同士を内線でつないだり、外部からの着信を電話機に適切に振り分けたりする装置です。従来は元から引いている電話回線を使用したレガシーPBXが使われてきましたが、近年はより高性能なIP-PBXやクラウドPBXが広まっています。
大量の発信・着信業務があるコールセンター、本社・工場・倉庫など離れた場所に複数の拠点を抱える製造業、多店舗を展開する小売業などで積極的に導入されています。
なお、PBXを「主装置」と呼ぶ場合もあります。本来、主装置とはビジネスフォン使用時に必要な機器のことです。混乱しないようにしましょう。
ここでは、PBXの仕組みやビジネスフォン・CTIとの違いについて解説します。
【図解】PBXの仕組み

PBXは、企業内にあるすべての電話機をつないで独自の通信網を形成し、内線同士の接続や取次ぎ、転送を容易にする仕組みです。たとえば、総務部にある電話機から営業部にある電話機にかける場合、直接つながるのではなく、いったんPBXを経由します。旧式では難しかったものの、近年出てきたクラウドPBXでは、遠方にある拠点内の電話機を内線でつなぐことも可能です。内線なので、通話料が発生しません。
外部からの着信があった場合も、自動で適切な電話機に振り分けられます。企業内から外部にかける場合、一つの電話番号を複数の電話機で利用することも可能です。
企業内には多くの電話機が設置されています。すべてに回線を引くと、運用保守や通信料金の管理が煩雑になり、大変です。企業で使う多くの電話機をPBXで制御すれば、保守や管理の手間が省け、通信コストも削減できます。
PBXとビジネスフォンの違い
PBXと似た電話システムに、ビジネスフォン(ビジネスホン)があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
【共通点】
- 社内の回線を複数の電話機で共有できる
- 外線からの着信を転送できる
- 内線通話ができる
【ビジネスフォン】
- 主装置と専用の電話機を使用する
- 基本的に、同じ拠点内にある電話同士でなければ接続できない
- 数十台から多くて数百台の電話機が接続できる
【PBX】
- 装置を置くタイプ、インターネット回線を利用するタイプなどがある
- 数千台の電話機に接続できる
- 種類によっては遠く離れた拠点の電話機やスマートフォンも内線化できる
ビジネスフォンもPBXも通話に特化した機能を持つシステムですが、接続可能台数や接続できる範囲の2点で大きく異なります。ビジネスフォンは同じ拠点内に限られ、接続できる台数も数十台ほどです。一方、PBXは電話機を数千台つなぐことも可能です。また、クラウドPBXであれば、遠く離れた拠点間の電話も内線でつなげられます。
中小企業や小規模な店舗、クリニック、オフィス移転が少ない職場などは、ビジネスフォンが向いています。導入コストを抑えることも可能です。
一方、大企業や全国に複数の拠点を持つ企業などでは、PBXが適しています。通話関連機能の充実度が業務効率に直結するコールセンターやカスタマーサービスなどのサポート部門も同様です。
PBXとCTIの違い
CTIとは、電話とCRMやチャットなどのコンピューターシステムを連携させる技術を指します。たとえば、CRMと連携すれば、着信時にかけてきた相手の顧客情報や対応履歴をPC画面に表示することが可能です。電話を受けた従業員は、表示された情報をもとにより適切な対応がとれます。業務の効率化や接客品質の向上を目的として、コールセンターやテレアポ営業などで導入されることが多いでしょう。
PBXは、発着信を制御したり内線同士をつないだりする役割を担う装置で、ほかのシステムと連携する機能はありません。
PBXとCTIのどちらも導入し同時に運用することで、企業内の通信を効果的に管理できるようになり、電話関連業務の効率化も図れます。
参考:CTIとは?メリット・デメリット、機能や導入事例を解説
PBXの5つの機能
製品による細かな違いはありますが、PBXにはほぼ共通して備わっている5つの機能があります。導入を検討している方は、まずはどのような機能があるのを把握しておくとよいでしょう。
ここでは、主な5つの機能を順にわかりやすく説明します。
1. 発着信の制御機能

発着信の制御機能とは、PBXが着信と発信をどの電話機・どの回線経路で行うかを判断し、適切にコントロールする機能のことです。
たとえば、社員が内線10番の電話機で外部に電話をかけた場合、PBXは空いている外線回線を選び、内線10番に割り当てられた番号で発信します。受け取った相手は、番号からどの部署からの電話かの判断が可能です。
また、外部から着信が入った場合、PBXは社内のどの電話機につなぐかを判断します。たとえば、代表番号への着信であれば受付の電話を鳴らし、営業専用番号への着信なら営業部の電話を鳴らすといった対応が可能です。
発着信の制御機能を活かすことで、会社の電話を効率的かつスムーズに活用できるようになります。
2. 内線機能

内線機能とは、同じ電話回線で結びついた電話機同士が内線で通話できる機能を指します。電話回線内での通話になるため、どれだけ話しても通話料金が発生しないことが最大のメリットです。
内線というと、同じ拠点内の電話機同士をイメージする方もいるでしょう。PBXでつなげば、以下のような電話機であっても内線接続が可能です。
- 東京本社と大阪支店のように遠く離れた拠点にある電話機同士
- 海外の拠点にある電話機と国内拠点にある電話機
- 従業員が使用する業務用のスマートフォン
ほかの拠点への通話が多い、従業員の通話はほぼスマートフォンで行っている、海外に拠点を構えているといった企業では、PBXの設置で通信コストを大幅に削減できるでしょう。
3. 代表番号着信機能

代表番号着信機能とは、会社の代表番号あてにかかってきた外部からの電話を、社内の電話機に振り分ける機能のことです。振り分けは、あらかじめ設定されたルールによって行われます。たとえば、以下のようなルールです。
- 代表デスク、受付など、複数の電話機を同時に鳴らす
- 受付→総務→庶務など、優先順位を決めて順番に鳴らす
- 営業時間中は総務、時間外は自動音声案内を流す
代表番号に着信があると、必ず誰かが応答する仕組みづくりに役立つ機能です。取引先や顧客からの電話に待たせることなく対応できるため、信頼関係の構築や満足度向上につながります。
4. ほかの電話機への転送機能

転送機能は、かかってきた外部からの着信を、受けた電話機とは別の電話機に受け渡す機能を指します。たとえば、外出中の営業社員にあてて電話がかかってきた場合、内線化しているスマートフォンにつなぎ、対応してもらうことが可能です。
転送には以下のようにいろいろなパターンがあり、あらかじめ設定したルールに従って転送が行われます。
- 不在転送:電話対応する人がいないとき、指定の電話機に転送する
- 着信選択転送:特定の電話番号からの着信を指定した電話機に転送する
- 圏外転送:スマートフォンが圏外にあるとき、別の電話機に転送する
- 保留転送:いったん受けてから、保留ボタンを押して転送する
状況にマッチしたルールを設定しておけば、電話をかけてきた相手を待たせることがありません。
5. パーク保留機能

パーク保留機能とは、PBXにつながっているどの電話機からでも保留中の電話に応答できる機能です。通常、保留できるのは受けた電話のみで、別の電話機で応答したいときは転送する必要があります。パーク保留機能を使うとすべての電話機が保留状態になり、応答できる人が手近な電話機から応答することが可能です。
電話の内容によっては「誰が対応できるか分からない」「担当者がどこにいるか把握していない」といったケースもあるでしょう。パーク保留し社内でアナウンスをかければ、担当者が自分の電話機で応答可能です。スムーズな引き継ぎができ、電話の相手を長々と待たせることがありません。
PBXの種類と特徴
従来、PBXは元から引かれている電話線を利用するものでした。現在では種類が増え、代表的なPBXに以下の3つがあります。
- IP-PBX
- クラウドPBX
- レガシーPBX
種類によって特徴が異なります。ここでは、それぞれの違いについて見ていきましょう。
IP-PBX(Internet Protocol PBX)
IP-PBXは専用の電話機を用意し、電話線ではなくIPネットワークを利用するPBXです。電話機ごとにIPアドレスを割り振って通信します。物理的に専用機器を設置するハードウェアタイプと、サーバーにインストールするソフトウエアタイプの2種類があり、状況に応じて選択可能です。
主なメリットには以下があります。
- 社内LANを利用するため、新たな電話線工事が不要で内線網を構築できる
- PCから内線番号の追加や変更、転送の条件設定などが簡単に行える
- 外部ネットワークを介さないため、安定しており、セキュリティ性が高い
主なデメリットは以下のとおりです。
- 専用機器やサーバーの購入・設置が必要なため、初期費用がかかる
- ソフト更新などは自社で対応する必要があり、専門知識を持った担当者が必要になる
IP-PBXは、安定性やセキュリティ性を重視する場合に向いています。
クラウドPBX(Cloud PBX)
クラウドPBXは、クラウド上に構築されたPBXサーバーを利用します。PBX本体や回線の敷設が不要で、インターネット環境があればどこからでも利用できます。
主なメリットは以下のとおりです。
- サーバー設置や回線の設置が不要で初期コストを抑えられ、導入しやすい
- 事務所の移転や改装の際、設備を移動させなくてよい
- スマートフォンも内線化できる
- 離れた拠点同士でもつなげられる
- メンテナンスは通常ベンダーが担当するため、専門知識を持った社員がいなくてよい
デメリットとしては、以下があります。
- インターネット環境に応じて音質や通話品質が左右されやすい
- インターネットを利用するため、入念なセキュリティ対策が必要になる
回線が混雑する時間は、通話品質の低下に注意が必要です。初期費用は抑えられる一方、月額料金が発生することが多いため、その点にも注意しましょう。
クラウドPBXは、導入費用の低さや導入の手軽さ、機能性などを重視する場合に向いています。
レガシーPBX・UnPBX
レガシーPBXは、昔から使われている電話線を利用するPBXです。オフィス内にPBX本体の装置や電話機を配置し、電話線を利用して使います。
主なメリットは以下のとおりです。
- インターネット回線がなくても内線・外線の接続が容易にできる
- 稼働が安定している
- 停電時やサーバーダウン時でも影響を受けづらい
- 運用コストはほかのタイプより低い
デメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 導入コストがかかる
- オフィス移転時には周辺機器や電話回線を移動する必要がある
- 拠点ごとにPBXを設置する必要がある
レガシーPBXは、安定性や運用コストの低さを重視していて、移転の予定がない場合に向いています。
PBXを導入するメリット・デメリット
PBXの導入にはさまざまなメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。導入を検討している場合は、どのようなメリット・デメリットがあるかを知っておくことが大切です。
ここでは、主なメリット・デメリットについて解説します。
PBXの導入メリット
どのPBXを導入するかによって変わりますが、導入には主に以下のようなメリットがあります。
- 限られた外線回路を複数の電話機で共有できる
- 電話機それぞれに電話回線を引かずにすみ、管理しやすくなる
- 内線でつなぐことで、通話料金が発生しない
- 転送機能により、取次ぎの手間が省けて業務効率化が図れる
PBXは、一つの外線回線を複数の電話機で共有する仕組みです。電話機それぞれに個別の電話回線を引く必要がないため、配線が簡潔になり、管理しやすくなります。PBXにつないだ電話同士は内線で話せ、通話料金が発生しない点も大きな魅力です。特に、クラウドPBXであれば海外や国内の遠隔地にある拠点の電話機を簡単に内線化でき、通信コストを大きく削減できます。
転送機能が使えることも、大きなメリットです。一次対応者がすぐに担当者の電話機に着信を回せるため、取次ぎの手間が減らせます。電話相手を待たせる時間を短縮できるため、業務効率化や顧客満足度の向上につながるでしょう。
PBXの導入デメリット
PBX導入の主なデメリットは、種類によって以下のように変わります。
- トラブル発生時、復旧に時間がかかると業務に支障をきたす恐れがある(共通)
- 社内で統一した運用ルールを整備する必要がある(共通)
- 専用機器の購入や設置により、導入コストがかかる(レガシーPBX・IP-PBX)
- メンテナンスは自社で対応するか、無理なら別途保守契約が必要になる(レガシーPBX・IP-PBX)
- 離れた拠点間の電話機は内線化できない(レガシーPBX)
- インターネット環境によって音質や通話品質が影響を受けることがある(クラウドPBX)
レガシーPBXやIP-PBXは、装置の設置が必要なため、比較的まとまった初期費用が発生します。また、メンテナンスは自社で行うか、別で保守契約を結ぶことが一般的です。クラウドPBXは導入がスムーズで、一般にベンダーが保守を担当しますが、インターネット環境によって音質や通話品質が影響を受ける点はデメリットと言えます。
また、情報漏洩などのリスクに備え、導入後は「パスワードは定期的に変更する」「スマホのOSは常に最新に保つ」などの運用ルールを定め、徹底することも必要です。
PBXを導入する際のポイント
PBXの運用を成功させるためには、導入前にいくつか押さえておくべきポイントがあります。特に注意したいポイントは以下の3つです。
- 既存の電話番号をそのまま使えるか
- 通話品質に問題はないか
- サポート体制やセキュリティ対策は充実しているか
PBX導入にあたっては、既存の電話番号がそのまま引き継げるか確認したほうが無難です。引き継げるケースが大半ですが、中にはできないケースもあります。
また、通話品質についてもしっかり確かめておきましょう。特にIP-PBXやクラウドPBXは回線の安定性に左右されるため、トライアルできる場合は試したほうが安心です。
サポート体制やセキュリティ対策の充実ぶりもチェックしておきましょう。サポート体制が充実しているところであれば、トラブル時でも迅速な対応が期待できます。セキュリティ対策は、特にクラウドPBXではベンダー頼りになるため、どのような対策を行っているのか確認が必要です。
PBXの導入事例
特徴やメリット・デメリットが分かっても、自社でどのように運用すべきかピンとこない方もいるのではないでしょうか。PBXの導入事例がわかれば、参考になります。
ここでは、実際に導入し運用している事例を2つ紹介します。
学校法人 戸早学園
戸早学園は、北九州エリアで専門学校や老人ホーム、幼稚園といった複数の施設を展開する学校法人です。
同法人では、電話環境に以下のような課題を抱えていました。
- 代表番号への着信に対する電話取次ぎや不在時の折り返しで無駄が発生している
- 既存のオンプレミス型PBXの老朽化が進み、回線容量が限界に到達、トラブルが増えている
- 運用にかかる手間やコストが増加している
さらに教職員が固定電話ではなく携帯電話を多く使うこと、当初充実していた携帯電話のサポートが受けられなくなったこともあり、新たな電話システムの導入を決断しました。
同社が選んだのはクラウドPBXで、以下のような導入効果がありました。
- 固定電話・携帯電話を一元的に管理できる
- 設備導入や運用、保守にかかるコストを抑えられる
- 音声品質が向上し、聞き取りやすくなる
- 離れた拠点でも内線がつながる
- 取次ぎや折り返しの手間がなくなり、業務が効率化した
クラウドPBXは電話配線などが不要で物理的な故障リスクが減ったため、トラブル時の原因解明や復旧も早くなることが期待されます。
株式会社りそな銀行
大手銀行のりそなでは、以下のような課題を抱えていました。
- ディールリングフォン(ディーリング特化の電話システム)の変更により、以前はできていた通話の録音ができず、在宅ディール業務に支障が発生した
- 東京のディーリングルームのメンバーの一部を埼玉に移転させたが、東京本社あての電話は東京本社でしか受けられないため業務が集中し、埼玉では手すきになる事態になった
そこで同行は、通話が録音できること・東京本社にかかってきた着信を東京と埼玉の拠点のどちらでも受けられることの2点を軸に、クラウドPBXの導入を決定しました。現在では、以下のような効果を上げています。
- クラウド環境に全通話を録音できる
- 東京本社あての着信が東京・埼玉のどちらでも受けられるようになり、一体での運営が可能になった
- 自宅でテレワークする際も電話対応が可能になった
- 通話の音質が向上した
もともとは在宅ディール業務での利用を想定していたクラウドPBXですが、現在では利用する業務の幅を広げているとのことです。
参考:株式会社りそな銀行(TramOneCloud導入事例)
まとめ
PBXは、企業内で複数の電話機をつなぎ、独自の電話網を構築する電話交換機です。レガシーPBX・IP-PBX・クラウドPBXの3種類があります。主な機能に以下があります。
- 発着信の制御機能
- 内線機能
- 代表番号着信機能
- ほかの電話機への転送機能
- パーク保留機能
これらの機能によって、電話関連業務の効率が大きく向上します。電話相手を待たせずに取次ぎしたり、内線通話にして通信コストを大きく下げたりすることが可能です。
導入にあたっては、通話品質やサポート体制、セキュリティ対策を十分に確認することが大切です。自社の環境に合った種類を見極め、活用しましょう。
















































