セールスイネーブルメントとは?意味や注目される背景・事例を解説
ビジネスの感度が高い人に広まっているセールスイネーブルメント(Sales Enablement)。「営業を改善したい」「生産性を向上させたい」「継続的に売上達成したい」と考えている企業が取り組み始めていますが、なぜ注目を浴びているのでしょうか?
今回は7,000社以上の営業支援に関与してきた弊社が、セールスイネーブルメントについて解説します。
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セールスイネーブルメントとは?意味や取り組み例
まずは、セールスイネーブルメントの意味や企業の取り組みについてわかりやすく解説します。
セールスイネーブルメントの定義
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、営業組織を強化・改善するための取り組みです。
営業担当者の教育やセールスコンテンツの制作、営業ツールの導入、営業プロセスの改善など各施策を実施して、営業活動への貢献度を数値化します。そして、数値を参考にして営業活動の最適化と効率化を目指すという取り組みです。
セールスイネーブルメントの取り組み内容
営業組織を強化・改善するための取り組みとして、以下のようなものが挙げられます。
セールスコンテンツの作成・共有・管理
営業組織を強化するために、商談時に顧客へ提示するセールスコンテンツ(プレゼン資料など)を作成しましょう。
そして、営業担当者が必要なタイミングでセールスコンテンツを瞬時に取り出せるよう、営業支援システム内に保管しておき、多くの人に使われる状態にしておきます。
営業担当者の教育
セールスイネーブルメントを導入すれば、営業担当者の成績や営業手法が可視化できるようになります。
成績優秀な営業メンバーが顧客獲得のためにどのような営業活動をしているかを把握できるため、それらを共有して組織のボトムアップを図りましょう。
SFAやCRM、MAの活用
セールスイネーブルメントではCRM/SFAやMAを活用してデータを収集していきます。各ツールで蓄積される顧客データを一元管理することで、どの施策が効果を発揮しているか検証しやすくなります。
検証結果を参考にしながら、PDCAサイクルを回して営業部門の売上を伸ばしていくことが可能です。
セールスイネーブルメントの効果・メリット
セールスイネーブルメントに取り組む効果・メリットは4つあります。
1. 営業力を向上できる
セールスイネーブルメントに取り組めば、営業力を向上できます。
たとえば、商談中に顧客から求められた資料をすみやかに取り出せれば、顧客満足度が上げられます。また、社内にどのようなセールスコンテンツがあるか把握できれば、コンテンツを再利用することも可能です。
2. 人材育成を仕組み化できる
セールスイネーブルメントで各担当者の成績、営業手法を可視化できれば、人材育成を仕組み化していくことが可能です。
CRM/SFAのような営業に特化したテクノロジーを活用すれば、常に最新の営業成績をリアルタイムで収集し、営業担当者ごとの営業課題を正しく把握して育成を実施できるようになります。
これにより、自社の恒常的な営業力強化につながるサポート体制が構築されることも大きなメリットといえます。
3. 各施策の貢献度の可視化できる
セールスイネーブルメントに取り組めば、どの施策が効果的なのか、貢献度が可視化できるようになります。たとえば、顧客にどのセールスコンテンツが刺さるのかを検証でき、今後、どのようなコンテンツを作成していくべきかを考えていけるようになります。
4. 営業部門とマーケティング部門の連携を強化できる
セールスイネーブルメントは、営業部門とマーケティング部門の連携強化に役立ちます。
マーケティング部門のデータ分析結果を営業部で活用すれば、リード獲得や成約の数を増やす効果的な営業戦略を展開することが可能になります。
営業力強化にはデータ利活用が不可欠であることからも、セールスイネーブルメントの導入には必然的に各部門との横軸での連携体制を構築していくため、マーケティング部門とのコミュニケーションも生まれることとなります。
あわせて読みたい:データマネジメントとは?営業部門へのメリットと現場で生かすためのポイント
セールスイネーブルメントが注目されている背景
セールスイネーブルメントが注目されている理由は、主に3つあります。以下に詳しく解説します。
セールスイネーブルメントの市場規模が拡大しているため
競合に勝つためにマーケティングと営業の一気通貫した動きがより重要になることから、セールスイネーブルメントの市場規模は拡大しています。
Research and Markets社の実施した調査によると、2020年には22億ドルだった市場規模は、2030年までに119億ドルになると予想されています。
大手企業を中心に、新規開拓に注力するためにMA導入を始めとしたマーケティング部門の強化に着手するケースが増え始めてきました。 また、CRM/SFAなどの営業支援ツールに関しても、導入企業が増えています。
顧客ニーズを把握してアプローチしていくため
インターネットの普及や価値観の多様化などで、顧客の需要は複雑かつ細分化しています。そうした需要の把握ができていない状況を打破できるのも、セールスイネーブルメントが注目される背景です。
セールスイネーブルメントでは、マーケティング部と営業部が適切なコミュニケーションを取るための教育はもちろん、明確な顧客データの蓄積・管理も目指せます。 顧客データを一元管理していけば、どのようなニーズがあるか仮説立てしやすくなります。
営業活動の属人化を防止するため
セールスイネーブルメントが注目されているのは、属人的な営業活動によって成果アップの糸口がわからない状況を解消できるためです。
セールスイネーブルメントは、改善施策をトータルに設計し、目標の達成状況や成果への貢献度などを数値化する取り組みです。売上アップへの筋道を論理的に導き、たしかな成果につなげられます。
営業活動が属人化する影響については、下記の記事で詳しく解説しています。
あわせて読みたい:営業が属人化してしまった結果とその対処「営業部長A氏の改革」
セールスイネーブルメント実施のポイント
企業がセールスイネーブルメントを実施するにあたって、注意したいポイントを以下に5つ解説します。
1. CRM/SFAツールを用いたデータ分析体制
セールスイネーブルメントでは、売上額や受注率、案件数などのほか、顧客情報や商談の履歴内容、営業スタッフに対する教育実施の履歴など、さまざまな情報をデータとして蓄積・活用できる体制を構築していく必要があります。
基幹システムの開発やCRM/SFAといったSaaSの導入を行い、データを効率的に蓄積していきましょう。
あわせて読みたい:営業活動の成否はシステムの連携が鍵! 連携先が豊富なCRM/SFAを選ぶべき理由
2. 専門部署や担当者を配置する
セールスイネーブルメントを実現させるのであれば、専門部署や担当者を設けた方がよいでしょう。
セールスイネーブルメントは営業のみならず、人材育成では人事、ツール開発ではシステム開発など、さまざまな部門にも関わります。各部門で連携を取ることもできますが、部門を切り分けず管理・設計できる部門を設けた方が効果的です。
3. 営業施策毎の成果に対する貢献度を把握する
教育研修や営業プロセスの改善、ツールの開発・導入などの営業施策について、それぞれ成果にどれだけ貢献しているかを把握しましょう。 また、最終的に見据えた目標に対する進捗状況も適宜チェックし、施策の見直しを行っていきます。
4. 営業ノウハウを共有して属人化を防ぐ
営業活動は各個人に任されることが多く、営業プロセスは属人化する傾向があります。
しかし、成果に繋がるノウハウを個人のみで保有するのは、組織として非常にもったいないことでしょう。セールスコンテンツや営業ノウハウを組織全体で共有し、誰もがそれを再現できる体制を整えることが大切です。
5. 営業マンの行動や能力を定義・評価する
人材育成の観点からも、セールスイネーブルメントは有用です。
営業ノウハウを共有することの重要性は前述の通りですが、もう一歩踏み込んで営業プロセスを標準化することで、営業力の均質化やマネジメントの効率化につなげることが可能です。
どのような営業担当者が活躍していけるのか、行動や能力を定義しておくことで、求める人材像を明確にしていけます。このような取り組みを「セールスアセスメント」といい、各担当者が求める人材像にどれだけ近づいているかを測定し評価することで、効果的な人材育成を実現できるでしょう。
セールスイネーブルメントの導入事例
株式会社ベネフィット・ワン
株式会社ベネフィット・ワンはCRM/SFAを導入し、営業担当者の教育面で大きな成果を出しています。
組織力アップに向けた営業活動の可視化および効率化と、部門間の連携によるクロスセルの推進を課題としており、セールスイネーブルメントの実施でトップ営業のノウハウや失注などの失敗例など、営業活動におけるあらゆる情報を共有化した結果、若手営業の戦力化が実現でき、事業部全体で見ると前年比360%の受注件数アップを果たしました。
なお、受注件数が増えるにともなって残業増の懸念がありましたが、情報共有や報告業務が効率化されたため、残業時間もタイムラインの利用前後で30%減となっています。
セールスイネーブルメント関連のセミナー・書籍
まだまだ日本では馴染みの薄いセールスイネーブルメントですが、以下のような書籍から詳しく学べます。興味のある方は、ぜひ参考に読んでみてください。
セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方
『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』は、セールスイネーブルメントの取り組み方が体系的にわかる書籍です。セールスフォース・ドットコムでセールスイネーブルメント本部長として活躍した山下貴宏氏が執筆しています。
成果を出す営業社員が輩出し続ける人材育成の仕組みを作るためには、どのような手順で取り組むべきか、わかりやすく解説されている書籍です。
著者 | 山下 貴宏 |
発売日 | 2019年12月 |
出版社 | かんき出版 |
ページ数 | 208P |
販売価格 | 1,760円(税込) |
トップセールスだけに頼らない組織を作る 実践セールス・イネーブルメント
同じく山下貴宏氏の著書『トップセールスだけに頼らない組織を作る 実践セールス・イネーブルメント』には、セールスイネーブルメントの取り組みの中でも人材育成にフォーカスして解説されている書籍です。
本書では、セールスイネーブルメントで人材育成に成功した企業事例などが紹介されています。他社がどのように取り組んでいるのか詳しく知りたいという方におすすめの書籍です。
著者 | 山下 貴宏 |
発売日 | 2022年12月 |
出版社 | 翔泳社 |
ページ数 | 240P |
販売価格 | 1,980円(税込) |
Sales Enablement アカウント型BtoB営業における営業力強化
『Sales Enablement アカウント型BtoB営業における営業力強化』は、営業マネージャーや事業部長向けに書かれた書籍です。富士ゼロックスグループに対する営業力強化を中心とした企画提案をしてきた河村亨氏の営業戦略がまとめられています。
働き方改革時代の営業バイブルと評価されており、多岐にわたる営業部門の業務をどこから改善していけばよいかがわかる、と評判の書籍です。
著者 | 河村 亨 |
発売日 | 2018年10月 |
出版社 | ブイツーソリューション |
ページ数 | 156P |
販売価格 | 1,100円(税込) |
以下は、日本の営業の課題にスポットを当て、改善のノウハウを指南した全144ページの無料書籍となっています。こちらもダウンロードして、ぜひ企業の営業改善にご参考ください。
セールスイネーブルメントで確実な成果を!
企業の営業力を強化するセールスイネーブルメントの取り組みには、関連する情報のデータ蓄積とその活用が欠かせません。
可能であれば、セールスイネーブルメントを専門とする部署を設けることが望ましいでしょう。自社の営業課題に合った最適な取り組みで、セールスイネーブルメントを導入し、自社の営業力強化と売上向上を実現しましょう。