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新規事業を立ち上げるまでの7つのプロセス|成功に必要な8つのポイントを紹介
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新規事業を立ち上げるまでの7つのプロセス|成功に必要な8つのポイントを紹介

新規事業の立ち上げは成長戦略に必要不可欠ですが、同時にリスクと不確実性をはらんだ取り組みでもあります。新規事業を収益化できる企業の割合は2割以下といったデータもあり、成功するためには、市場機会を分析して戦略性をもったマーケティングプランを立てる必要があります。

この記事では、新規事業を立ち上げる際に押さえるべき7つのプロセスと8つのポイントについて紹介します。

新規事業の意義と目的

新規事業を立ち上げるまでの7つのプロセス|成功に必要な8つのポイントを紹介_新規事業の意義と目的

新規事業は企業の成長戦略を考える上で欠かせない選択肢です。その意義と目的について、多角的な面から考える必要があるでしょう。

企業の持続的成長

企業経営は、一時的な市場機会から収益を得るだけでは成り立ちません。将来にわたって消費者に価値を提供し、社会的責任を果たしていくことが求められます。

これを「ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)」と呼び、法的な制度をはじめとする社会的な仕組みは、この前提をもとに形作られています。

企業を存続・成長させるためには、継続的に新しい価値を作り出す取り組みが不可欠であり、新規事業開発はすべての企業にとって重要な意味を持っています。

事業リスクの分散

複数のビジネスモデルを持つことや、複数の市場を対象に事業を行うことは、企業を存続させていく上でのリスクを低下させることにつながります。

同時に、複数の事業を持つことで意思決定の選択肢が増えるため、経営リソースを有効活用するための自由度を高めるという意味でも有効です。

外部環境の変化への対応

企業経営は消費者市場のほか、労働市場や金融市場などの外部環境との相互作用のなかで成り立っています。企業の手がけるビジネスは、外部環境の変化からの影響を免れえません。

需要構造は時代とともに移り変わり、市場ニーズは思いもかけない要因に左右されます。外部環境の変化に対応していくためにも、新規事業の創出は不可欠な取り組みです。

PLC(製品ライフサイクル)の短縮化

ほとんどの製品やサービスにはPLC(製品ライフサイクル)が存在し、数十年という単位で市場に残り続けることができるものはほんのひと握りです。

技術革新のスピードは時代を追うごとに速まり、消費傾向の多様化・複雑化が進んでいます。多くの製品やサービスのPCLは短縮化する傾向にあり、新規事業を作って新しい製品やサービスを市場に投入していくことの重要性が増しています。

新規事業の類型

ひとくちに新規事業といっても、さまざまなパターンが考えられます。中でも、経営戦略論の古典である「アンゾフの成長ベクトル(製品=市場マトリクス)」は、新規事業の全体像をつかむ上で役に立ちます。

このマトリクスは、対象とする市場と製品・技術(製品・サービス)の2つの軸で成長戦略を分類したものであり、既存市場と既存製品で攻める戦略を「拡大戦略」、多角化を「全社戦略」と位置づけています。

M&Aなどの外部リソースを活用する方法も含めると、成長戦略がこの分類にすべて当てはまるわけではありませんが、新規事業という観点から見ると、新しい市場に進出するケースと新しい製品やサービスを開発するケースの2つの方向性が考えられます。

新規市場開拓

新規事業が対象とする市場に着目すると、自社の既存の製品やサービスが対象としている市場以外に進出するのが一般的です。既に存在している他の業界・業種の市場に進出するケースや、これまでに存在しなかった新たな市場を創出するケースが想定されます。

新製品開発

従来の事業領域とは異なる分野の新しい製品やサービスを開発するのも、典型的な新規事業です。

なお、同じ事業領域のなかでのライン拡張(既存製品のラインナップ拡充)は新規事業には該当しませんが、ブランド拡張(新しいブランドの創設)は新規事業といわれる場合があります。

多角化

「多角化」は、新規市場開拓と新製品開発によって、既存の事業の他に収益源を創出することを指します。新市場への進出のほかに、M&Aによる垂直統合(バリューチェーンの内部化)も新規事業とされる場合があります。

事業転換

既存の事業分野に加えて新たな事業分野に進出する多角化に対して、既存の経営リソースのほとんどを新しい事業モデルに振り向けるのが「事業転換」です。従来の事業との関連性が薄いものが新規事業に該当します。

新規事業開発に必要な7つのプロセス

新規事業開発に取り組む際には以下のプロセスを踏む必要があります。

事業コンセプトの明確化

ここまで述べたように、新規事業にはさまざまな目的とパターンが存在します。新規事業開発は将来に向けた取り組みであることから、自社のMMV(ミッション・ビジョン・バリュー)との整合性や新規事業が対象とする事業ドメイン(事業領域)の妥当性を検討し、新規事業のコンセプトを明確にしておくことが重要です。

事業アイディアの創出

新規事業の具体的な中味は、自社の持つ新技術やアイディアがもとになるプロダクトアウトの発想と、市場や顧客を分析することによって導き出すマーケットインの発想である場合が考えられます。

前者の場合はより幅広い応用可能性、後者の場合はマーケティングを重視して検討することが必要です。

事業性評価

新規事業のアイデアが収益に結びつくかどうかを判断するのが「事業性評価」です。

市場調査による客観的な情報をもとにした収益性に関する仮説に対し、市場性(市場に受け入れられるかどうか)と実現可能性(自社の経営リソースで対応できるか)の両面から、新規事業の成功確率と事業リスクを検討します。

ロードマップ・アクションプラン策定

ロードマップは新規事業立ち上げまでにいたるプロセスとタイムスケジュールを示すもので、アクションプランは各プロセスを具体的な行動計画に落とし込んだものです。

計画策定の段階では、各プロセスで必要となる要件を抜け漏れなく網羅しておく必要があります。

体制整備(人材のアサイン)

アクションプランに従って、関連する部門や人材のリソース配分を行います。組織的なプロジェクトマネジメントが求められ、意思決定プロセスを明確にした推進体制の整備が重要となります。

環境整備(資金・パートナー等)

新規事業開発における「ヒト・モノ・カネ・情報」の配分・投入を考える上で、「ヒト」以外の「モノ・カネ・情報」に関わる部分が「環境整備」に該当します。既存の設備資産を活用できるかどうか、投入できる資金の規模はどの程度かといったことが含まれます。

多くの場合、新規事業では外部リソースの活用や外部との連携が必要とされるため、外部からの「情報」についても広く収集する必要があります。

施策の実行と検証

新規事業は自社にとって未経験の領域への進出であることから、アクションプランの実行段階で、想定外の事柄に対応しなければならない状況が起こり得ます。

この点からも、組織的な推進体制を構築しておくことが大切です。また、検証プロセスを踏んでPDCAを回していくことも必要でしょう。

新規事業を成功させるための8つのポイント

新規事業開発のプロセスを踏むなかで、以下の8つのポイントに留意することが重要です。

ビジョンや事業ドメインとの整合性

新規事業が自社のMVVにそぐわないものである場合、全社的な合意形成が得られず、新規事業開発を推進していくための総合力が低下する可能性があります。

また、新規事業は既存の事業ドメインに充当している経営リソースと関連性のあるところからスタートするケースがほとんどであり、従来の事業とまったく関連性のない新しい事業を立ち上げるのであれば、別会社を新設するという選択肢も存在します。

これらの点から事業コンセプトの段階でMVVや事業ドメインとの整合性を検討することが重要です。

市場機会の分析の重要性

ほとんどの新規事業は、収益を生み出せるかどうかが成功の判断基準となります。実際には、楽天のスマホ事業など企業戦略として長期的に投資し続ける例外的なケースもありますが、一般的には収益化できない新規事業は継続する意味がありません。

収益化できるかどうかのリスク判断は、客観的な情報をもとに市場機会を十分に分析する以外に方法はなく、後述する環境分析や事業性評価を通してさまざまな角度から検討する必要があります。

事業リソースの見きわめ

アイデアや技術に十分な市場性が見込まれる場合でも、それを実現できる経営リソースを自社が保有していなければ、新規事業を成功させることはできません。

自社でまかなえない経営リソースが必要な場合には、外部からの調達や連携といった考え方に切り替えることも選択肢のひとつです。

プロジェクトの体制整備

新規事業の成功には、事業を遂行できるスキルを持った人材のアサインや、責任体制と意思決定プロセスの明確化、それにもとづく他の経営リソースの適切な配分が不可欠です。

プロジェクトを推進するキーマンを中心とした体制整備が、新規事業の成功を左右します。

マーケティングの重要性

マーケティングの重要性は新規事業に限られるものではありませんが、どんなに価値のある製品やサービスを開発したとしても、市場の認知と理解を得られなければ新規事業は成功しません。

特に新しい分野への進出である場合、既存製品やサービスのマーケティングアプローチではうまくいかないケースが想定されます。ターゲットに即したマーケティング戦略を新たに策定する必要があります。

外部リソースの活用

新規事業開発における外部リソースの活用は、未知の領域における専門性やノウハウの獲得、不足する経営リソースの機動的な確保、リスク分散とコスト削減などの点において、大きな意義を持ちます。

外部とのネットワークの活用によって、机上の分析では得られない情報を入手することが可能になります。新規事業では、外部リソースも積極的に活用しましょう。

公的補助金・融資等の活用

主に、起業や中小企業の新規事業開発を支援するための公的補助金や助成金、融資制度が、行政の各レベルに応じて設けられており、新規事業の資金面を補うために活用できます。

代表的な補助金・助成金としては以下のようなものが挙げられます。

  • ものづくり補助金(経済産業省:革新的サービス・試作品開発、生産プロセスの改善等が対象)
  • 成長型中小企業等研究開発支援事業(中小企業庁:中小企業の産学連携を支援)
  • 新事業育成資金(日本政策金融公庫:新規事業の事業化後7年以内の中小企業に対する融資)
  • 創業支援金(各自治体:支給要件は自治体で異なる 創業以外でも利用できる場合がある)

行政の補助金や助成金は、対象事業者の条件や資金の活用目的がこまかく定められていることがほとんどであり、事業計画書とともに収益の見積もり等を合わせて審査が行われます。

補助金や助成金を活用するためには、それぞれの対象となる要件を調べておく必要があります。

撤退条件の明確化

新たな収益の柱を作ることが新規事業開発のひとつの目的です。収益化が実現しなければ、新規事業を立ち上げる意味をなしません。収益化するまでの期間を見誤ったり、想定以上の資金を投入して収益化できなければ、経営に対するダメージを広げることにつながります。

以下のような撤退条件をあらかじめ設定し、目標を達成できない場合は撤退することが重要です。

  • 目標売上高や利益を一定期間達成できない場合
  • 一定の市場シェアを獲得できない場合
  • 投資額が一定を上回る場合

新規事業開発に活用できるフレームワーク

新規事業開発のプロセスのなかで、事業コンセプトの検討や事業性評価、マーケティング戦略を具体化する際に活用できるフレームワークとして以下のものが挙げられます。

環境分析のためのフレームワーク

環境分析に用いられる代表的なフレームワークとして以下のものが挙げられます。

PEST分析

PEST分析はPolitics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)の4つの視点から外部環境を分析するためのフレームワークです。

詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

参考:PEST分析とは?目的や分析のやり方、注意点などを徹底解説

5フォース分析

5フォース分析は、外部環境のうち自社がかかわるミクロ環境を分析するためのフレームワークです。

詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

参考:事業戦略の策定に役立つフレームワーク10選|成功に導くポイントも解説

VRIO分析

VRIO分析は、自社の経営資源をValue(経済的価値)・Rareness(希少性)・Imitability(模倣可能性)・Organization(組織)の4つの要素から分析するフレームワークです。環境分析のうち内部環境の分析に位置づけられます。

詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

参考:事業戦略の策定に役立つフレームワーク10選|成功に導くポイントも解説

事業性評価のためのフレームワーク

事業性評価のためのフレームワークには以下のものがあります。

SWOT分析

SWOT分析は自社の内部環境における「強み・弱み」と外部環境における「機会・脅威」をマトリクスにして分析する手法です。

詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

参考:SWOT分析のやり方を解説! 企業戦略に活かす方法

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは新しく考案したビジネスモデルが成り立つかどうかを確認・検証するためのフレームワーク・テンプレートです。

9つの項目を可視化することでビジネスモデルを俯瞰し、可能性を明らかにするとともに、実現性の面からも客観的な評価を得ることができます。

番号 内容
①顧客セグメント 顧客ターゲットの明確化
②価値提案 顧客が得られる具体的な価値、顧客が商品やサービスを購入する理由
③提供チャネル 顧客への提供方法販売チャネル
④顧客との関係 顧客との長期的な関係を築くための方法
⑤収益の流れ キャッシュポイントの明確化
⑥主要なリソース 事業展開に必要なリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)
⑦主な活動 事業展開に必要な行動要素
⑧主要なパートナー 仕入先・提携先などの外部リソース
⑨コスト構造 固定費・変動費などコスト構造の分解

バリュープロポジションキャンバス

バリュープロポジションキャンバスは、新規事業で提供する製品やサービスが顧客の求める価値に一致しているかどうか検証するためのフレームワークです。ビジネスモデルキャンバスの要素のひとつである価値提案の部分について掘り下げるために使用します。

顧客が求める価値のなかで、競合他社が提供することができず、自社が提供できる独自性のある価値をバリュープロポジションといいます。

バリュープロポジションキャンバスは以下の項目を言語化し、顧客側と企業側の両面からバリュープロポジションを検討します。

提供価値 顧客セグメント
④製品/サービス ①顧客が解決したい課題、実現したいこと
⑤顧客の恩恵・メリットを与えるもの ②顧客が得る恩恵・メリット
⑥顧客の悩みや課題を取り除くもの ③顧客の悩みや解決したい課題

バリュープロポジションキャンバスは、対象とする市場が未成熟なケースに効果的です。

マーケティングのためのフレームワーク

マーケティング戦略策定のためのフレームワークには以下のようなものがあります。

STP分析

STPは、自社が対象とする市場についてSegmentation(市場細分化)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)を定めるためのフレームワークです。

環境分析を行った後にSTP分析を行い、マーケティング・ミックスを策定する、というのが一般的なマーケティングプロセスです。

詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

参考:セグメンテーションとは?分析に役立つ具体的な方法と手順、大手企業の事例を解説

4P・4C分析

Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(プロモーション)はマーケティングミックスの4Pといわれます。

4Pのそれぞれの要素を顧客側から見ると、Customer Value(顧客価値)・Cost(顧客のコスト)・Convenience(利便性)・Communication(コミュニケーション)が対応しています。

4P(マーケティングミックス)についての詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

参考:4P(マーケティングミックス)とは? 営業戦略に活かす方法も解説!

AARRR(アー)モデル

デジタルマーケティングを主体とする分野で使われるようになった、顧客行動を分析するためのフレームワークです。類似したものにパーチェスファネル、AIDMA、AISASなどのフレームワークがあります。

AARRRモデルについての詳しい解説は以下の記事をご覧ください。

参考:アクイジション(Acquisition)とは?リテンションとの違いや施策の具体例、活用法を解説

戦略性を持って新規事業の成功確率を高めよう

新規事業の開発は、長期間にわたって企業を存続させていくうえで、視野に入れなければならない取り組みです。新規事業を成功させるためには、しかるべきプロセスを踏むことと、戦略性を持つことに対する認識を深める必要があります。

特に、市場調査による情報収集と事業性評価は、新規事業開発の意思決定を左右するものです。綿密な調査と分析を行ったうえで戦略を立て、新規事業を成功に導くことが重要です。

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