
顧客管理とは?顧客関係管理で営業売上を最大化する方法
BtoC、BtoBのどのような業種・業態の企業であっても、顧客との関係性の構築は極めて重要です。
しかし、「顧客管理をしっかりと行いたいが、どうしていいかわからない」「顧客管理ツールを導入したはいいが、あまり使いこなせていない」と悩んでいる営業担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、顧客管理の目的や顧客との関係を良好に保つために必要なことのほか、失敗しない顧客管理のポイントやシステムの選び方について解説します。
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顧客管理とは?
顧客管理とは、顧客に関する基本情報や購買履歴、担当者とのやりとりなど、さまざまな情報を一元的に管理することです。
近年はCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:Customer Relationship Management)ともいわれます。
顧客管理の目的
それでは、何のために顧客管理を行うのでしょうか。顧客管理の目的は、「顧客との信頼関係強化と、それを分析・活用することによる売上の最大化」です。
顧客1社ごと、または顧客一人ずつにしっかりと向き合うことによって、顧客のニーズを把握できるようになります。すると、それらに対して細やかな対応を行えるようになるため、顧客からの信頼度は格段に向上し、リピート率もアップするのです。
また、顧客が今何を必要としているのかを的確にキャッチアップできるので、顧客にとって最適な商品・サービスの開発や提案を行えるようになります。
顧客管理が今注目されている理由
近年ではインターネットやSNSの発達により、顧客は欲しい情報を自分からいつでも入手できるようになりました。
商材にはよりますが、それに伴って電話営業や飛び込み営業といった従来型営業手法は効力を失いつつあり、そもそも少子高齢化によって大量の営業人員を抱えるのが難しい時代です。
また、リアルの場で新規顧客と接点を持つためには、セミナーやイベントを開催したり、展示会に出展したりと、多額のコストとマンパワーをかけるしかありません。
それはあくまで接点創出にすぎず、そこから商品購入や契約ともなれば、さらなるコストやマンパワーが必要となります。
こうした状況下で、新たな顧客創出の可能性を秘めており、さらに既存顧客の受注増や失注顧客の掘り起こしなど、コストやマンパワーをかけずに売上を伸ばすための手段として、顧客管理にあらためて注目が集まっているのです。
顧客との関係を良好にするには?
顧客管理において重要なのは、顧客との関係性を良好に保つこと。そのために、具体的に何をどうすればいいのか、見ていきましょう。
顧客に対する理解を深める
顧客管理と聞くと、顧客の企業名や個人名、連絡先などの基本的な情報を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。しかし、それだけでは不十分です。
対象顧客が個人であれば、年齢や性別から、居住地域、購買行動の履歴、購買の傾向まで、さまざまな属性を把握しておかなければなりません。
BtoBの場合は、顧客企業の業務内容や社員数はもちろん、企業理念やビジョン、ミッション、過去の成約実績、失注履歴などもしっかりと把握、管理、更新しておきたいところでしょう。
顧客のニーズに応じた商品・サービスを開発したり、顧客にとって最適な提案をしたりするためには、「顧客に対する深い理解」が大前提。顧客への深い理解こそが、関係をより良くしていくための基礎となるのです。
顧客の潜在的なニーズをすくい上げる
個人・法人を問わず、顧客は必ず何らかの課題を抱えています。そして、それを解決するための商品やサービスを探しています。顧客に対して営業を行うのであれば、顧客の課題をしっかりと把握した上で、それを解決できる商品やサービスを適切に提供しなければなりません。
顧客管理の担当者は、顧客とコミュニケーションの中でどんな困り事があるのか、思いを巡らせる必要があるのです。
ただ、実際の顧客は、直面している課題を正確に説明できないケースも少なくありません。場合によっては、課題と認識していないこともあります。
そのため、顧客と密にコミュニケーションをとりながら、顧客自身も気づいていない潜在的なニーズをすくい上げる必要があるのです。
迷惑にならない程度のコミュニケーションを継続する
顧客が商品を購入、あるいはサービスの契約をした。ビジネスはそこで終わりではなく、むしろ「そこから関係が始まる」といっても過言ではないでしょう。
顧客が迷惑だと感じない範囲内で、引き続き密接なコミュニケーションを図っていく必要があります。
その代表的なコミュニケーションは、顧客が購入した商品やサービスに関するアフターサポートです。
商品やサービスの良かった点や満足したポイント、反対に不満を感じた点などをヒアリングしながら、顧客と良好な関係を構築していきたいところです。
顧客管理で失敗しないための3つのポイント

顧客管理の目的は、「顧客との信頼関係を強化し、それを分析・活用した売上の最大化」にあります。
売上向上につなげる顧客管理は、ミスやトラブルができるだけ発生せず、効率的かつ現実的な方法で行う必要があるでしょう。
ここでは、顧客管理で失敗しないための3つのポイントをご紹介します。
1 管理すべき情報を決める
まず、どういった顧客情報を管理していくかを検討しましょう。一般的に顧客情報には、下記のようなものが挙げられます。
- 顧客の基本情報(氏名、住所など)
- 商品やサービスの購入・取引履歴
- 自社と顧客とのコンタクト履歴
これらの中で、自社が重視すべき顧客情報の見極めが必要です。
BtoCかBtoBかによって商品・サービス、単価、契約内容はそれぞれ異なりますし、それに伴って基本情報や購入履歴、コンタクト履歴以外にも顧客からの問い合わせ履歴や顧客へのサポート履歴、インサイドセールスからの営業電話履歴など、重視すべき情報も変わってくるでしょう。
この基本設計を誤ると、不要な情報ばかりを収集してしまったり、必要な情報の蓄積が得られなかったりして、正しく分析できない事態に陥ります。自社の今後のマーケティング活動に役立つ情報は何かを見極めて、蓄えるべき顧客情報をしっかりと決めてください。
2 入力ルールを明確にする
顧客情報を顧客管理ツールに入力するのは誰か――それは、名刺交換や営業・販売活動によって、顧客情報を直接入手する機会が多い営業担当者でしょう。
重要なのは、顧客情報入力の目的や意味、その重要性を彼らにしっかりと説明しておくことです。
売上の最大化という目的や意味を意識しないまま入力すると、大事な情報の抜け漏れや、入力ミスにも気づかないおそれがあります。
ですから、「誰がどんな情報をいつ入力するのか」といったルールを、明確にしておきたいところです。
「手の空いている担当者が情報をまとめて入力する」のような曖昧なルールでは、入力遅れや抜け漏れが発生しかねません。
また、営業担当者の退職や転勤などによって重要な取引情報が引き継がれないなど、属人化を防ぐ意味でもルール化は有効です。さらに、顧客情報の責任者・管理者をしっかりと決めておくと、より効果的でしょう。
3 顧客管理に最適なツールを導入する
顧客管理を滞りなく行うため、どのようなツールを選ぶべきなのでしょうか。業務用PCにインストールされているExcelやスプレッドシートなどでも、決して不可能ではありません。
しかし、同時編集が難しかったり、関数・マクロの影響でデータが重くなったり、さらには人的なミスで消失したりなど、企業や組織が大きくなればなるほどデメリットが増えていくのも事実。
まっとうな顧客管理を行いたいのであれば、顧客管理に最適化されたCRMツールを導入したいところです。ツールを選ぶ際に検討すべき条件としては、次の3点が挙げられます。
あらゆる顧客情報が一元管理できる
企業や組織で“あるある”なのが、顧客情報が部署または営業拠点ごとに、バラバラに管理されているケースです。情報入力のルールやフォーマットもバラバラだと、せっかくの貴重な資産が分析・活用しきれません。
顧客管理用のExcelやスプレッドシートが社内に乱立し、それらの管理用Excelがまた必要になる…という笑えない事態も起こりえます。
顧客情報を有効活用するためには、どんな担当者や場所からでも一元的に管理できる仕組みが重要です。
ツール選定の際は、複数の担当者や部署・拠点から集約した情報を一元管理・集計・分析できるかどうかは、しっかりチェックしておきたいものです。
セキュリティレベルが高い
近年、企業が保有する顧客情報の流出が世間を大きく騒がせています。マルウェアや悪質な従業員の手によって一度流出すれば、既存の顧客離れ、企業の信頼低下はもちろん、株価などにも影響を与えかねないのが実情です。
顧客管理情報は企業の機密情報であり、外部に漏洩するリスクは何としても避けなければなりません。
ですから、顧客管理ツールは、セキュリティ対策がしっかりしているものを選択すべきでしょう。クラウド系のツールを使う場合は、データ保管の場所や通信の暗号化といったポイントを確認するようにしてください。
他ツールとの連携などカスタマイズが可能
顧客情報は単独で分析・活用するだけでなく、社内に存在する他ツールと連携させながら利用することもあるでしょう。
ツールごとに顧客情報を管理するとなると、大きな手間とコストがかかり、場合によってはリスクもあります。
ほかのツールとの連携が必要かどうかの確認はマストです。
顧客管理はどのように行うべきか?

顧客管理ツールには、大きく分けると「Excel」「無料顧客管理ツール」「有料顧客管理ツール」の3つの選択肢があります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。
Excel:導入しやすいが顧客情報管理には向かない
Excelは多くの企業や組織において、さまざまな情報の管理ツールとして使われています。
ただし、顧客情報のようなセンシティブな情報の管理は、運用面でもリスク管理の意味でも推奨できません。
メリット
- 操作に慣れていれば使いやすい
- PCにインストールされていれば、導入費用はかからない
- 最低限の管理や集計は可能
デメリット
- 外出時などにはスマートフォンを使って操作がしにくい
- 同時編集できるが人的なミスなどはリカバーできない
- 専用設計のツールではないので、重要情報の管理には向かない
無料顧客管理ツール:あくまで簡易的な使用に限られる
昨今、インターネットを介してダウンロードできる無料の顧客管理ツールも存在しています。
Excelに比べてはるかに操作性が高く便利なものですが、有料の顧客管理ツールに比べて機能が制限されている場合もあり、セキュリティ面でも決して万全とは言えないなど、少なからず弱点もあります。
メリット
- Excelと連携可能なタイプなど、操作性が良いものもある
- 導入コストがかからない
デメリット
- 無料ツールはセキュリティ面で不安がある
- 導入前調査や導入後サポートなど、導入担当者の負担が大きくなることもある
- 機能制限や有料版への移行を前提とした簡易的なツールもある
有料顧客管理ツール:顧客情報の管理には最適
2022年現在、顧客管理のために作られたツールがいくつか販売されています。ほとんどはクラウド型であり、CRMとSFA(セールス・フォース・オートメーション/Sales Force Automation:営業支援ツール)があります。
SFAのほうが営業活動の支援に特化しています。
メリット
- 「情報の一元管理」「高セキュリティ」「カスタマイズ可能」の条件を満たしている
- 導入前および導入後のサポートが期待できる
- すでに多くの企業にて導入されているため信頼性が高い
デメリット
- 導入コストがかかる
- 導入後のサポートレベルはツールによって異なり、その確認が必要
有料顧客管理ツール導入成功事例
自社で扱う顧客情報がそれなりの規模や範囲だったり、セキュリティ面で不安だったり、一定の予算が確保できるというのであれば、ぜひ有料顧客管理ツールの導入をおすすめします。
そうはいっても、有料顧客管理ツールで実際にどれほど効果が期待できるのか、気になるところでしょう。そこで、有料顧客管理ツールを導入し、高い効果を得た企業の成功事例をご紹介します。
受注件数を3.6倍にした株式会社ベネフィット・ワン様

株式会社ベネフィット・ワン様は、1996年に創業し、法人向けの福利厚生の代行サービスを展開している企業です。2015年の時点で法人顧客数5,000社、登録されている会員の数は620万人でした。
従来使っていたシステムには、「自由度が低くカスタマイズしにくい」「外部で顧客情報を閲覧できず、部署間で連携がとれない」「数値集計ができない」といった不満があったそうです。
そこで、新たにクラウドツールを導入。結果として「受注件数3.6倍、残業30%減」という効果を上げたのです。
株式会社ベネフィット・ワン様が導入後に得られた効果は、主に下記の2点です。
より良い提案ができるようになった
顧客管理ツールの導入により、顧客が抱えている課題や、顧客の変化のプロセスが把握できるようになった。情報をもとにして、営業担当者がより良い提案をできるようにもなっている。
顧客情報の集約が可能になった
顧客企業には、大阪や東京など拠点がいくつか分かれているケースもあったが、ツール導入後は情報を集約し、「大阪で得られた情報を東京の担当者が利用し、営業展開する」など、スムーズな連携が可能となった。
顧客管理ツールを選ぶ際の3つのポイント
現代のビジネスにおいて重要な顧客管理。悩ましいのは、顧客管理のためのツール選びです。いざ探そうと思うと、さまざまな顧客管理ツールがインターネット検索で表示され、メリットをアピールする広告が目に飛び込んできます。
最後に、自社にマッチした顧客管理ツールを選ぶ際に、押さえておくべき3つのポイントをご紹介しましょう。
1.営業担当者が扱いやすいツールか
顧客管理ツールを実際に使うのは、営業現場の担当者です。ITツールに慣れている人もいれば、そのようなものの扱いを不得手とする人もいるでしょう。
ツールを導入しても操作が難しかったり、慣れが必要だったりすると、「担当者に使われない」「入力ミスが多い」「使う人が偏ってしまう」といったトラブルが発生します。
使用する営業担当者にとって扱いやすいツールかどうか確認しておきましょう。
2.顧客管理や営業支援の機能が充実しているか
顧客管理ツールを導入しても、売上の最大化をはじめとする目的が果たせなければ、導入の意味がありません。そもそも、一口に顧客管理ツールといっても、搭載されている機能はツールによってさまざまです。
「導入してみたら想定していたものと違った」といった失敗を防ぐためにも、導入前にテストできるツールを選びたいものです。
3.イニシャルコスト・ランニングコストは適正か
有料の顧客管理ツールの導入や運用には、それなりにイニシャルコストやランニングコストがかかります。中には「高価なツールを導入したけれど、自社の営業体制にはオーバースペックだった」と悔やむ声もあります。
売上アップや業務効率アップなど、得られるメリットがそれらのコストを上回るかどうか、事前にシミュレーションをしておく必要があるでしょう。
顧客管理を徹底して売上アップを目指そう

顧客管理ツールは、顧客をより深く理解し関係を深め、売上を最大化するために必要不可欠なものです。
顧客管理ツールを選ぶ際には、「顧客情報の一元化」「高セキュリティ」「カスタマイズ性」をチェックすることを忘れないようにしてください。
顧客データを分析・活用してニーズに沿った提案を行い、売上アップを目指しましょう。