
タイムマネジメントとは?役割・メリット・フレームワークを徹底解説
近年多くの企業では、「働き方改革」の推進によって業務の効率化や生産性向上が喫緊の課題として浮上しています。
そこで注目を浴びるのが「タイムマネジメント」です。
タイムマネジメントは、単に時間の使い方をマネジメントする手法ではなく、業務の効率化やスキルアップなど、業務全体の生産性向上に寄与します。
そこで本記事では、タイムマネジメントを導入するにあたり、押さえておくべき役割やメリットをはじめ、取り入れるポイントや注意点について解説します。
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タイムマネジメントの意味と役割

まずはじめに、タイムマネジメントの意味や役割について解説します。
タイムマネジメントの概要
タイムマネジメントとは、時間の使い方の改善により、業務効率や生産性を向上させることを目的としたビジネススキルの1種を指します。
つまり、時間の使い方を計画し、限られた時間の中で効率的に目標を達成することにあります。
従来のビジネスシーンでは「スケジュール管理」という言葉が主に使われてきました。
しかし、1日のスケジュールを把握して、滞りなく作業をこなすことを目的とするスケジュール管理とは異なり、タイムマネジメントは、限られた時間の中で生産性を向上させるために、行動や意識をいかにマネジメントするかにフォーカスした手法と言えます。
近年、定型化された業務が減る一方、複雑化する業務や効果の最大化を主眼とした仕事が増加傾向にあります。
そのため、業務をスケジュール通りこなすスキルより、効率よくタスクをこなすために不可欠な行動や意識改革が求められているのです。
タイムマネジメントを取り入れる背景
なぜ時間を管理する手法でなく、生産性を向上させるための行動マネジメントの手法が注目を浴びるのか、企業が置かれている立場・背景から解説します。
「働き方改革」の推進
タイムマネジメントが求められる背景には、政府及び企業が主導になって推進する「働き方改革」や、国内の労働力人口の減少が影響しています。
総務省統計局が発表した労働力調査によると、2019年の就業者数(2019年平均)は6,724万人とされています。*1
しかし将来的に見ると、今後、生産年齢人口(15~64歳)の減少が加速し、2060年には労働人口が約4,500万人になるとの試算もあります。
これらを補うためには、多様な人材の社会進出を創出し、働き手を増やすことと同時に、従業員一人当たりの時間を最大限に活用することが不可欠です。
*1)総務省統計局 引用
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
生産性の向上
現在日本の企業競争力は低下傾向にあります。
公益財団法人日本生産性本部によると、OECDデータに基づく2018年の日本の時間当たりの労働生産性は46.8ドル(4,744円/購買力平価換算)と、OECD加盟36カ国中21位、主要先進7カ国ではデータが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。*2
今後は、海外企業の技術発展や市場競争の激化により、より深刻な問題になることが予想されます。
そのため、従来の高品質なジャパンブランドを維持するためには、タイムマネジメントを通して、組織全体の業務効率化を推進し、生産性を高めていくことが不可欠といえるでしょう。
*2)公益財団法人日本生産性本部 引用
https://www.jpc-net.jp/research/list/comparison.html
タイムマネジメントを導入するメリット

タイムマネジメントの導入により、企業全体だけでなく、従業員一人ひとりがさまざまなメリットを享受できます。
以下では、タイムマネジメントを導入することによって得られるメリットについて解説します。
重要度の高いタスクをこなし、仕事が効率化
タイムマネジメントにより、タスクを可視化し優先順位を決めることで、優先度の高い業務に注力することが可能なため、効率的に業務を遂行することが可能です。
従来のスケジュール管理のように、目の前にある仕事をただこなすだけでは、業務効率は改善しません。
目標達成において不可欠なタスクを把握し、行動を実行することで、従来のマネジメントより、求める結果が得やすくなります。
残業時間を削減しコストカットに寄与
タイムマネジメントの導入は経営効率化にも寄与します。
タイムマネジメントを行うことで、従業員一人当たりの作業効率が高まり、残業時間やそれにかかるランニングコストを削減することもできます。
残業時間が減れば、従業員の満足度の向上やエンゲージメントの醸成も期待できます。
仕事とプライベートがうまく両立される
これまで日本企業の多くでは、残業が常態化し、多く残業することが美徳とされていました。
しかし、タイムマネジメントのフレームワークを確立し、従業員の理解度がより深化すれば、作業効率の改善から、従来作業に充ててた時間をプライベートに割くことができるようになるかもしれません。
家族や趣味に時間を使ったり、自身のキャリアアップやスキルアップにあてるなど、時間の有効活用ができれば、仕事とプライベートの両立による好循環なサイクルを生み出すことができるでしょう。
振り返りの時間を設けることが可能
中長期的なメリットとしては、業務の効率化によって捻出した時間を、より生産性を高めるための振り返りの時間とすることができます。
日々の業務に追われ、タスクをこなすことに必死になっていれば、当然日々の業務の出来やタスクの緊急性や重要性を再考する時間は作れません。
しかし、一度タイムマネジメントの概念が定着すれば、空いた時間で「計画通りに進行しているか」や、「時間配分は適切か」など、適正にタイムマネジメントを行えているかを振り返る時間を作れます。
タイムマネジメントの方法とフレームワーク

タイムマネジメントの意味や取り入れるメリットについて把握できたら、ここからはタイムマネジメントの方法とフレームワークについて見ていきましょう。
①業務の可視化
まずはじめに行うべきは、ふだん取り組んでいる業務をロジックツリーやブレインストーミングを使って洗い出し、可視化すること。
この工程でのポイントは、多角的要素から業務の抽出を行うことです。
②優先順位をつける
業務の洗い出し・可視化ができたら、次に業務の優先度や重要性をつけていきましょう。
この時用いるのが、緊急度と重要度でタスクを4象限に分解する「アイゼンハワーマトリクス」です。
アイゼンハワーマトリクスとは、第34代アメリカ合衆国大統アイゼンハワーがタスクや時間管理を行う時に使っていたフレームワークと言われています。
- 第Ⅰの領域 緊急度・重要度とも高い業務
- 第Ⅱの領域 緊急度は低いが重要度は高い業務
- 第Ⅲの領域 緊急度は高いが重要度は低い業務
- 第Ⅳの領域 緊急度・重要度ともに低い業務
緊急度と重要度を4象限に振り分けることで、優先度の高い領域から取り組み、優先度が低いものについては、必ずしも自分でやるのではなく、他人に任せたり、時間を見つけて行うことで、タスクを適切かつ効率良く回すことができます。
③目標設定
次の工程は、抽出し分類できたタスクを、具体的な目標や期限ごとに設定する段階です。
その際に有効なのが「SMARTの法則」です。
SMARTの法則とは、ジョージ・T・ドランのよって1981年に提唱された目標設定方法で、目標達成に不可欠な要素の頭文字5つをとって構成されています。
- Specific(明確性/具体性)
- Measurable(計量性)
- Assignable(割当設定)
- Realistic(実現可能性)
- Time-related(期限設定)
タスクごとに5つの構成要素に則して設定することで、より効果的にタスクを可視化することができます。
1点意識しておきたいのが、タスクが5つの構成要素すべてを満たす必要はないということです。
あくまでも、SMARTの法則は目標達成やタイムマネジメントを遂行するためにツールに過ぎません。
活用する際は、どの基準を取り入れるべきかを判断して、目標設定するようにしましょう。
④時間を見つけて振り返る時間を設ける
ここまでの工程を終えたら、あとは実行に移していくだけです。
しかし、ただタイムマネジメントを実行して終わりではなく、効果測定のために必ず振り返る時間を設けて、浮き彫りとなった課題を可視化しましょう。
「計画通りに進行しているか」、「時間配分は最適か」など、これまでの作業工程と比較して進捗状況を比較したり、想定通り業務が完了していない場合は、必要に応じて都度、軌道修正することも大切です。
⑤まとめて「処理」する時間を作る
タイムマネジメントは、優先度を設定した目標に向けて、効率的に仕事に取り組む手法です。
しかしタイムマネジメントを導入したからといって、従来の業務をおろそかにはできません。
タイムマネジメントによって捻出した時間を、優先度の低いタスクの処理にあてるようにしましょう。
タイムマネジメントを取り入れる際の注意点

最後に、タイムマネジメントを取り入れる際の注意点について解説します。
タイムマネジメントの導入で、各業務が機械的になってしまっては意味がありません。
そうならないために、以下に列挙したポイントに注意して導入していきましょう。
タイムマネジメントは無理なく実現可能な範囲で行う
タイムマネジメントを取り入れる際は、完璧なスケジュールを目指すのではなく、マイルストーンに重点を置き、業務全体に悪影響が及ばないようにスケジュールを立てましょう。
スケジュールに余裕があれば、人為的なミスの軽減や突発的な業務にも対応することが可能です。
感覚や直感で重要度を決定しない
これまでの感覚や直感に任せて、時間管理やタスクの重要度を決定することは避けましょう。
業務の抽出方法や、緊急性や重要性の優先度、目標設定の方法など各工程を誤ると、本来のタイムマネジメント運用とは異なる結果となってしまいます。
感覚に頼った決定方法ではなく、基本に忠実な設計をおすすめします。
目標を立てることを目標にしない
タイムマネジメントを取り入れる際、目標を立てることを目標にしないようにしましょう。
タイムマネジメントの遂行にこだわりすぎると、仕事の進め方に融通が利かなくなったり、柔軟な対応ができなくなりがちです。
また、目標達成に向けて不要なタスクを除外することがメリットであるにもかかわらず、「目標を立てること」という不要なタスクを設定していては、かえって作業効率が悪くなってしまいます。
具体的なタスクのマネジメントも忘れずに
タイムマネジメントは行動や時間を管理する手法であると同時に、タスクを効率よくまわすタスクマネジメントでもあります。
そのため、本来の目的である業務効率の改善や生産性向上だけにフォーカスするのではなく、具体的なタスクマネジメントも忘れないようにしましょう。
タスク管理の具体的な方法や導入するポイントについて知りたい方は、以下の内容を参考にすることをおすすめします。
また部署にナレッジを落とし込みたい場合や、部署でお悩みの場合には無料でセミナーを開催していますので、興味がある方は、あわせてこちらも参考にしていただけたらと思います。
タイムマネジメントを導入して効率的かつ生産性のある業務に取り組もう!

業務の効率化や生産性の向上には従業員1人ひとりのタイムマネジメントが不可欠です。
今回解説したようにタイムマネジメントを行えば、これまで非効率だったスケジュールやタスクを適切に管理し、業務改善につなげることができるでしょう。
タイムマネジメントを導入するにあたっては、方法やフレームワーク、注意点を正しく理解して行うようにしましょう。